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「絶滅すれば、ほかの生物も絶滅する」「新薬開発にも役立つ」ゴキブリ嫌いの人間が見落とす“彼らの存在意義”

「絶滅すれば、ほかの生物も絶滅する」「新薬開発にも役立つ」ゴキブリ嫌いの人間が見落とす“彼らの存在意義”

ゴキブリスト・柳澤静磨とは何者か? #2

note

――昆虫館へは、ゴキブリについてどのような問い合わせがきますか?

柳澤 食べる系の話は、とてもよく聞かれます。食は皆に関わる、ひとつの大きなテーマだからでしょうか。興味・関心を持たれる人が多いように感じます。そのうえ気持ち悪い生き物で、食べられる……というのが、皆の興味をそそっているんですかね。

 そうした問い合わせがくると僕は「食べられるし、食べる人もいますよ」とお答えしていますが、具体的にどうやって食べるのかまで、踏み込んで聞いてくる人はまずいません(笑)。僕も過去に調理して食べた経験はありますが、残念ながら今はゴキブリアレルギーになってしまったので、食べることだけはできなくなってしまいました。

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 ゴキブリをはじめとする虫を、日常的に食べたいわけではありませんが、この虫はこういう味であるという知識をもっておくのは意外と大切かなと思っているんですよね。実際食べてみると、似ているように見える生き物でも、種類によって全然味が違うことがわかるからです。同じバッタでも、種類が違うと味が違う。味で、生物としての差を感じるのも面白いものです。

――実際自分もそれを体験してみたい! という人は少ないかもしれませんが、情報としてはなるほど面白いですね。

私たちが目にする黒いヤツは、ゴキブリの一部に過ぎない(写真:『ゴキブリハンドブック』より)

柳澤 ゴキブリは世界に4600種以上、日本には64種(2022年7月時点)いて、見た目も生態もさまざまです。その中にはシイタケや青りんごの香りがするものもいるし、#1でお話ししたように、黒くツヤツヤしていて動きが素早く…というごくごく一部の偏ったイメージに全く当てはまらない種類もたくさんいます。家屋に出る種類のゴキブリが、数多くいるなかのごく一部だということも、知らない方は多いでしょう。

 こういった話は正直、実生活ではほぼ役に立たないでしょう。しかし昆虫館でゴキブリを展示していると、こんな種類がいたなんて! 実際はこんな生き物なんだと驚かれる方もたくさんいます。ゴキブリが嫌われているがゆえ、逆に興味を持ってくれる人はたくさんいるのも事実です。

ゴキブリハンドブック

柳澤 静磨

文一総合出版

2022年8月1日 発売

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

「絶滅すれば、ほかの生物も絶滅する」「新薬開発にも役立つ」ゴキブリ嫌いの人間が見落とす“彼らの存在意義”

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