最近、テレビドラマやニュース、YouTube、Netflixなどの配信動画を1.5倍速や2倍速で視聴するスタイルが増えている。市場調査会社クロス・マーケティングが21年3月、20代から60代の男女1100人にヒアリングしたところ、20代の男女の約半数が動画を倍速で視聴した経験があると答え、その割合は60代でも20%台を記録したという。
コンテンツとして消費する人が増加
『映画を早送りで観る人たち』(光文社新書)などの著作があるコラムニスト稲田豊史氏によれば、ドラマや映画を「作品」として「鑑賞」するのではなく、単なる「コンテンツ」として「消費」する人たちが増えていることが背景にあるとする。とりわけNetflixなどのサブスク型(月額定額料金)のサービスとなれば、作品1本あたりに料金を支払っている感覚が希薄になるために、じっくり「鑑賞」することを避け、結論を早く得たいがために倍速にして観たり、10秒送りなどの機能を駆使して、手っ取り早く結論を知ろうとするのだそうだ。
たしかにニュースなどの時事関連で、事実のみを効率的に知っておきたい場合には、倍速で観れば短時間に多くの情報を仕入れることができる。オンラインが珍しくなくなった大学の講義などでは、多くの学生が倍速視聴しているとの指摘もある。試験勉強などで、必要な準備を手っ取り早く済ましてしまいたい人にとって倍速視聴は実に便利なツールといえよう。
だが映画やドラマの作り手からみれば、せっかく仕込んだ、会話に挟まれる間や、街の風景、風の音、空に浮かぶ雲、など今後の展開のための隠れたメッセージをすっとばして視聴されたのではたまったものではないだろう。自分たちの作品がコンテンツとして消費されていくことに我慢できなくなる気持ちも理解できる。
こうした倍速視聴に関しては、賛否両論で世の中喧しいが、これはドラマや映画の世界だけの話ではない。現代人の多くが何事にも結論を早く知りたがる傾向が強まっているのだ。