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「あのな、考えてみろ。何千組といる中で、おまえらが選ばれた。ネタをやって、選ばれるだけの何かがあったんだ。それは何だ? おまえがテレビ局のお偉いさんの息子だからか? 違うだろ。トータルで、おまえらが決勝にふさわしい芸人として選ばれただけだ。だから、出るからにはスベらないように、ちゃんと調整しておけよ」

 この後藤さんの言葉には、当時、救われました。

「いつか売れるんだろうな」と漠然と信じていた

 賞レースやネタ番組というのは、野球で言えば、ホームラン競争です。

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 誰がもっとも飛距離を出したり、本数を多く打ったかを競うものなんです。このホームラン競争で1位になった人は、無条件でチームに入れます。

 この「チーム」というのは、芸能界のことです。だから、売れるきっかけとしてはいいんです。

 芸能界というチームに入って、最初はホームランを見せてくださいと言われて、パカーンと打ちますよね。

 でも、3ヵ月ぐらい経つと、今度はバントしてみてください、レフトを守ってみてください、ランナーコーチはできますか……、そうやっていろんなポジションを振られるようになります。そして、それぞれうまく結果を出さないと、チームには残れないんです。

 つまり、芸能界で売れ続けている人たちは、ホームランが打てるし、エースでもあるし、キャッチャーだってできる、という人たちばかりなんです。

 だから、ぼくはホームラン王は目指さずに、早い段階からキャッチャーもセカンドも代走もベンチのスコアラーも全部やっておこうと思ったんです。

 下積み時代はそれなりにいろいろありましたが、どこかで、「いつか売れるんだろうな」と漠然と信じていました。