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9月14日の時点で、YouTubeでの再生回数は3700万回となっている。
ウクライナ政府の許可がなければ、こんな大掛かりなミュージックビデオの撮影はできないはずだ。
またウクライナでは18歳から60歳の男性は総動員令で原則出国が禁止されているが、カルシュ・オーケストラのメンバーは例外的に政府から外国との行き来を認められている。現在彼らはワールドツアーを実施して、曲とともに世界各国にウクライナの状況を伝えようとしているほどだ。
このミュージックビデオのことを教えてくれたのは、全身タトゥーだらけの一見怖そうだがとても優しい青年だった。
「これを見ると泣きそうになっちゃう」
と言う彼は、住んでいた街をロシア軍に占領されて逃れ、その後はがれきの撤去や避難民支援のボランティアをしていた。
彼は、ミュージックビデオを見ると「自分のお母さんのことを考えてしまう」とも言っていた。実際、こんな風に苦しい気持ちを抱えながら子どもを預けて、戦場に向かった人もいるのだろう。
さて、このミュージックビデオを巧妙なメディア戦術というのか、ウクライナの人たちの気持ちを代弁しているというのか。
中指を立てた切手
もうひとつ例を。
取材中、通訳のウクライナ人がニヤニヤしながら話しかけてきた。
「ルスキー・カラブル・イディ・ナホイって言ってごらん」
現地人が外国人に意味を教えずに現地語で「◯◯って言ってごらん」とうながすのは、99%下品な言葉を言わせて喜ぶためと相場が決まっている。最後に通訳は、
「この言葉の意味はね、『ロシア軍艦、go fuck yourself』という意味だよ」
と教えてくれた。
ちょっと解説がいるだろう。