「ゼレンスキー大統領ってウクライナでけっこう人気あるの?」

 ウクライナに行ったと言うとよくこう聞かれる(筆者は3月下旬から2ヶ月間、ウクライナを取材した。詳しくは「連載 ウクライナの『戦場』を歩く」をご覧ください)。

 首都キーウの駅に貼られていたこのポスターの写真を見せると、なおさらそう思えてしまうらしい。

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ウクライナの首都キーウ駅で見つけたポスター。4月1日に筆者が撮影

ゼレンスキーはヒーロー扱いされているのか?

 たしかにゼレンスキーがヒーローのキャラクターに変身している。後で調べたら、ウクライナ人のアーティストがアベンジャーズのキャラクターに似せて作り、テレグラムで広まった画像だった。 

 しかし、ゼレンスキーが本当にウクライナの人たちから「ヒーロー」として賛美されているかといえば別の話である。むしろ、こうやってポスターにしてからかってよい対象というくらい、引いた目線で見ているのではないかと思う。

 街中ではこんな声を聞いた。

「え? ゼレンスキーをロシアの侵攻前から支持していたかって? ぜーんぜん! でも彼は、今のところ私たちと同じ考えに基づいて行動しているから支持する。今後、どうするかは戦争に勝ってから考える」

 中東取材の経験が長い日本人ジャーナリストたちと現地で話す機会もあったが、彼らは、

「ウクライナの人たちは中東とは違うよね。戦争の時、中東だったら、『神のためだ!』とか『指導者万歳!』ってすぐなっちゃう人もいるけど、ここはそういうふうにはなっていない」

 と言っていた。私は中東には好きなところもあるので、あまり悪くは言いたくないのだが、確かに「我々には独裁的なリーダーが必要」と平然と言う中東の人が時にいる一方で、ウクライナではそういう声は聞いたことがない。

 人々は「ゼレンスキーにはしっかりと頑張ってもらおう。そして自分たちもできることをしよう」と考えているようにみえた。

街中にはウクライナ国旗があふれていた。亡くなった兵士の数の旗が立てられている。キーウにて5月24日に筆者が撮影