大澤慶太さん(仮名)は現在50歳。3年前、まったくの未経験から葬儀業界の門を叩き、昼夜を厭わぬ現場で様々な死や遺族と向き合ってきた。そこで実感したのが、葬儀業界特有の事情と、ブラックな労働環境だ。その知られざる内幕を隠すことなく語っていただいた。(全2回の2回目/1回目を読む)

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面接で聞かれる「霊感ありますか?」

「まず最初の面接で聞かれたのが、『霊感ありますか?』。冗談みたいだけど、見えちゃってる人とか、そういう気配に敏感だと仕事にならないからって言われて、『ないです』って答えたら、次の質問が『死体、大丈夫ですか?』。

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 それなりの覚悟もあったから『大丈夫だと思います』と答えたら、すぐ霊安室に連れていかれて、ご遺体を引き出して、手を合わせてって言われて。そりゃ一瞬ウワッと思ったけど、まぁ平気かな、と」

 面接は合格。正社員として雇用され、さっそく現場に出ることになる。

「最初は『足持ち』と言って、ご遺体をお棺にいれる手伝い役。先輩が運転するクルマに乗ってついていくんだけど、金色の仏壇みたいな飾りのついた霊柩車って今はほとんど使われてないんだよね。

 街中を走る普通のエスティマとかアルファードでも、緑ナンバーだとだいたいそういう時に使う寝台車だということがわかってくる。後部座席にストレッチャーが入ってて、そのクルマで自宅、病院、老人ホームとかの施設にお迎えに行くわけ。

 あと警察へお迎えにいくことも多い。自宅で亡くなって、そのまま引き取れるのは医者がついてて診断書がある場合で、普通の突然死だったら、まず警察が行って現場検証して、そこからご遺体を警察病院に運んで検死をする。それが終わると、俺たちがお迎えに行くという段取りだね」

写真はイメージ ©iStock.com

「自宅での突然死」の中には、いわゆる「孤独死」も含まれる。このようなケースは往々にして発見が遅れることが多いという。

「発見が遅かった場合、3日ぐらいで腐ってくる。だんだん緑っぽくなって、さらに1週間ぐらい経つともう真っ黒になって、粘液が浮き出てきてテカテカ光るんだよ。警察にお迎えに行く場合は、腐乱したご遺体はけっこう多くて、たぶん孤独死なんだろうね。

 で、そういうときはやっぱりニオイがキツいんだよ。あれは服というか、繊維の隙間まで染み込むみたいで、ホントに洗ってもなかなか取れない。現場で臭いを抑えるには、棺の中にドライアイスを入れて、さらに漂白剤を撒くの。プールの匂いみたいになるけど、それで少しは消える」