世の景気に左右されることのない仕事といわれる「葬儀屋」。しかし、未曾有のコロナ禍においては、その仕事ぶりや景気が大きく変化したという。
そもそも、利用する側としては、一生で数回しか関わらないと思われる葬儀業界は、わからないことだらけ。そこで、元・葬儀屋の社員にコロナ禍に見舞われた3年間の仕事ぶりを聞いた(全2回の1回目/2回目を読む)
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新型コロナで亡くなった人を葬る、「直葬」の実態
大澤慶太さん(50歳・仮名)は、3年前に葬儀会社に就職。まったくの未経験からはじめて、すぐに葬儀の一式を取り仕切るようになったという。
「俺が葬儀業界に入ったのが2019年の末くらいなので、ほぼコロナ禍のなかで仕事を続けてきたということになるね。最初の緊急事態宣言の頃は、遺体をお迎えにいくときに防護服でフル装備してた。あれ、脱ぎ着するのがけっこう大変なんだよね。新型コロナで亡くなった方を葬るときは『直葬』と言って、お迎えから焼き場まで直接運んで骨にするので、最終的には俺1人で全部やってた」
新型コロナウイルス感染者が亡くなった場合、家族といえどもお別れに立ち会えなかった。
「最初はそういうガイドラインだったね。火葬場に立ち会えないどころか、もう一切触れられない。亡くなった方と同居してたご家族は、すべて濃厚接触者になるんだよ。だから、遺体のお迎えも俺だけで行く。
病院で亡くなった場合だと、お迎えに行った時点でもうシートにくるまって密封されているから、お棺に入れて、寝台車に載せて、会社に戻るとコロナ専用の安置所っていうのがあるから、そこに置く。
新型コロナのご遺体を焼ける火葬場も決まってて、そこが混みあってると、そのまま順番待ちしていただくことになる。焼くまで1週間から最大で2週間ほどかかったこともあった。もちろん安置しているうちに腐っちゃうこともある。冷蔵施設がある会社なら腐敗進行も少ないだろうけどね。
焼く時も遺族は立ち会えないから、俺が持っていって、棺を焼き場の人に引き渡して、遺族からの心付けがあれば配って、焼いて骨になったら家に届ける。ご家族が濃厚接触者だったら対面できないので、骨壷を玄関の前に置くの」
コロナ禍のパニック時は、このような「置き配葬」が頻発していた。
「家までお骨を届けると、だいたいは感謝されるけど、すごい文句を言われた時もある。『家族が誰も立ち会えないなんて、ありえないでしょう!』とかね。俺に言われても……と思ったけどさ。そういう時はもう『ルールですから』ってハッキリ言い返すしかない。
でもね、このコロナ直葬って、会社はまったく儲からないんだよ。お通夜も葬儀もしないから。一応、骨になって落ち着いてから改めて葬儀しませんか、という提案はするんだけど、なかなかやる人はいなかったね」