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「お金の扱い」に関するクレームには要注意

 喪主も悲しみに暮れているだけではない。気持ちが落ち着いてくると、葬儀社の仕事に対して様々なクレームをつけてくるという。

「料理がまずかったとかはよくあるよ。でもそこは自分がやった仕事じゃないから、申し訳ありません、よく言っておきます、で済む。キツいのは個人攻撃だよね。それこそお辞儀の角度が悪いとか、ネクタイ曲がってたとか、靴下擦れてたとか、どこ見てんだというぐらい突いてくる。あと、現場で祭壇を眺めて『思ってたよりも小さい』とか文句つけてくる人もいる。そういう時に限って、現場の俺たちと、営業や見積もりをした人が別だったりするから、対応できなかったりするんだよね」

 クレーム対策として最も気をつけなくてはいけないのは、「お金の扱い」に尽きる。

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「よく『受付に立って欲しい』といわれるんだけど、それは規則でやらないことになってる。お香典に触っちゃダメなのよ。香典泥棒って、そーっと近づいてきて置いてある香典袋を奪い去るようなイメージだけど、実際は、喪服を着て葬儀屋のふりをした人間が『こちらで預かっておきます』と受け取って消えちゃうという、サギみたいなやり口なの。そういうことが起こらないように、受付は身内から出してくださいってお願いしておく。

 あと『心付け』っていう風習なんだけど、こちらでお金を預かってマイクロバスとか霊柩車の運転手さん、あとは葬儀場の配膳さんとかお茶出しの係の方に配るの。葬儀場はいろんな人が出入りしてるから、間違った人に渡さないように葬儀会社側でやることになってるんだけど、喪主さんの中には『そんなのこっちの気持ちで渡すものでしょ』とか言い出す人がいて、揉めることがある。

 そこを丸め込んで話すのが我々の仕事なんだけど、それでも絶対払わない人もいる。それはもうしょうがないというか、こちらからみなさんに『すみません、今回は心付けナシです』って言うしかないよね」

 葬儀会社の社員として様々な現場を見てきた立場として、これから葬儀をするであろう我々にどんなアドバイスがあるだろうか。

「まず『死んだらどうするか』『どういう葬儀をあげたいか』を、自分で決めておいたほうがいい。やっぱり本人というか、故人の意向がいちばん強いんだから。生前に予算含めて決めちゃえば手っ取り早いよね。それと、籍は入れとけって思う。何十年も一緒に住んでる老夫婦でも、なぜか籍が入ってないことがけっこうあるんだよ。

 内縁関係だと、喪主になりづらかったり、血縁者とトラブルになったり、葬儀でも蚊帳の外にされちゃうことが多い。保険や共済の積立があっても、動かしづらかったりするしね。最近は入籍というカタチにこだわりたくないとか、いろんな事情があるとは思うけど、死ぬまで添い遂げるんだったら籍を入れておいたほうがいいよ」

 自分が死んだ先のことを考えられるのも、生きているうちだけ。いつか、そのうち、と後回しにせずに、いま向き合うことが大事なようだ。