文春オンライン

2022/10/03

一番安い棺は、みんな選ばない

 葬儀の内容を決めていくのは、亡くなった本人ではなく残された者。そんな矛盾をはらんだシステムゆえに、葬儀代を積み上げていくのはもはや心理戦だ。

「見栄っ張りの気持ちを突くんだよ。故人の肩書とかをみて、社長さんなら『これだけ立派な方でしたら、このくらいの祭壇を』という一言を添える。お棺もランクがあって、カタログを見せると、やっぱり一番安いのは気まずいからみんな選ばない。だいたい下から2番目とか3番目くらいが多いね。ただ、お金持ってそうな人ほど合理的だったりして、『一番安いのでいいです』というパターンもある」

 特に値段の幅が大きくなってしまうのが「祭壇」や「花代」だ。

「祭壇は大きさで値段が釣り上がるし、袖をつけるかどうかでも変わってくる。俺が関わった葬儀でも、一基100万円する祭壇もあったね。あとは生花でお棺を囲うように設える『花祭壇』も高い。花を並べてイラストみたいにすることも出来る。野球が好きだったから、ボールの形にするとかね。それやると花だけで100万以上かかる。

 祭壇や棺は、原価もあるから、良いものを使ってくれてもウチはそこまで儲からない。やっぱり数を出せるお花代がワリがいいよね。……これ、コロナ禍だから使えるやりかたなんだけど、コロナで葬儀に来れない方は、代わりにお花を出していただくのはいかがですかってセールスするの。

 スタンド花は1台で1万5000円〜3万円。それを参列の代わりに送ってくださいという案内を出すと、けっこう集まるのよ。まぁ参列者が少ないと、返礼品や食事も減るから、そっちの業者は苦しくなってしまうんだけどね」

写真はイメージ ©iStock.com

 見積もり担当は、所属する葬儀会社だけでなく、関連の業者も含めた営業係となるため、責任が大きくなる。

「でも、ウチだけで月に60~70件は葬儀を仕切ってるから、1回にこだわるより数を打ったほうが効率がいい。とにかく、葬儀の価格って規模で決まるのよ。どれだけ参列者がいるのか、というのが一番大きい。

 地元の名士さんとか、肩書が立派な人は参列者も多いかなと思うけど、長生きされた方は縁者も亡くなってるから、あまり集まらない。元議員の方の葬儀を担当したこともあったんだけど、100歳で亡くなって、しかも6人兄弟の末っ子とかいってたから、もう親戚すらいなくて、参列者も孫とその嫁くらいしかいなかった。

 逆に若くして亡くなった方のほうが参列者は多い。現役世代で、横の繋がりがあるからものすごい来る。あと子供。同級生とか地域の方々が家族で来るから。ただ、子供の葬儀はこちらもしんどいよ。さすがにかわいそうだし、親御さんもずっと泣きはらしてたりして、いたたまれないよ」