2021年6月11日にカラオケパブ「ごまちゃん」(大阪市北区)の経営者だった稲田真優子さんが殺害された事件の初公判は、大阪地方裁判所の201法廷にて9月16日に開かれた。殺人の罪に問われている宮本浩志被告(57)が裁判員に向かって「死刑をお願いします」と言い放つ衝撃の幕開けとなったこの初公判で、検察は被害者の交際相手の供述調書を読み上げた。
「『ラブリッシュ』時代から、まあ(交際相手の男性の稲田さんに対する呼び方)は“ウェザー”のことを『結婚して子どもがいる』『○△の団地に住んでいる』『新大阪で働いている』などと話していました」
ウェザーとは稲田さんと交際相手の間で宮本被告のことを指す“隠語”で、毎朝のように天気予報をLINEで送っていたことに由来していたという。
「ウェザーはまあに、LINEで尋常じゃない数のメッセージを送ってきていました。私とまあが一緒にいる時に電話をしてきたこともありました。『ごめん、ウェザーから電話が来た。すぐに終わらせるから』と言って、電話していました。ウェザーと電話することについて、『ほんまに喋るのいや。そもそも喋ることないし、気持ち悪い、気持ち悪い』などと話していました」
「ウェザー」の調書が読み上げられる間、被告は一点を見つめ…
確かに、稲田さんへのLINEメッセージを辿っていくと、毎朝の連絡では天気予報が欠かさずに書かれており、6月に入ってからは「熱中症に気をつけてください」といったメッセージも多い。
法廷で、好意を寄せていた相手に「ウェザー」と揶揄されていた事実を知ることは、被告にとって決して気分が穏やかではないはずだ。そもそも稲田さんに交際相手がいたことを知っていたのだろうか。
検察官が調書を読み上げるのをメモしながら、私は時折、被告人席に座っている宮本被告を凝視した。じっとして動かず、視線は一点を見つめている。マスクで表情ははっきりとしないが、動揺は見て取れなかった。