性犯罪の被害者はバッシングを受けやすい。報道に対し「警戒が足りなかったのでは」「誘うような行為があったのではないか」と、被害者側の“落ち度”を責めるネット上の書き込みに覚えがある人も多いだろう。
2016年から「性暴力と報道対話の会」に参加している、ライター・小川たまかさんの著書『告発と呼ばれるものの周辺で』(亜紀書房)は、そんな被害者たちの声に耳を傾けた一冊だ。
ここでは本書より抜粋して、2018年5月以降10人以上の逮捕者を出した、ナンパ塾「リアルナンパアカデミー(通称RNA)」による集団準強姦事件について紹介する。(全2回の1回目/後編に続く)
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「ナンパ塾」“塾長”の強気なツイート
リアルナンパアカデミー(以下、RNA)の起こした事件をご存知だろうか。RNAはいわゆる「ナンパ塾」で、女性との出会いやコミュニケーションを求める男性へ向けて、代表の「塾長」と呼ばれる男Wがナンパのノウハウを指南していた。
そのようなマニュアル本を売ったりセミナーを開いて商売にしている人は他にもいるが、RNAの問題はその実態。
最初の逮捕者が出たのは2018年の5月。女性に対する準強制性交等罪で、メンバー(塾生)の2人が逮捕された。W自身も別の女性に対する同罪で同年9月に逮捕。その後も逮捕者が続き、最終的に10人以上が逮捕され、起訴された塾生のうち数人には懲役5年から7年の実刑判決が下っている。
手口はどれも同じ。ナンパした女性たちとゲームをし、示し合わせてわざとゲームに負けさせ、大量に飲酒させる。そして意識をなくした女性たちをレイプした。
団体内では、女性たちの会話や性行為の様子を画像や映像に残すことが推奨されていた。
理由は「冤罪を防ぐため」。Wは、女は同意のもとにセックスしたくせに後からレイプを訴えることがある、と吹聴していた。しかし「冤罪を防ぐ」はずのこの映像が、結果的に被害者たちが「抗拒不能(泥酔などで意識がなく抵抗できない状態)」だったことの証明となった。「浅はかとしか言いようがない」とは、捜査関係者の漏らした言葉だ。
メンバーの中で最初の逮捕者が出てから自身が逮捕されるまでの約4カ月間、Wは強気にツイッターを発信し続けた。そのツイートはたとえば下記のようなもの。
「刑事が正義のために動いていると思わない方が良い。これ分かってない人多すぎる。気にくわないから、話題性があるから、そういうので確固たる証拠もなく逮捕して不起訴でも知らんぷりするからね。」(2018年5月9日 https://twitter.com/onnazukinp/status/994122536462962688)
「弁護士が最低限の仕事をすれば90%は不起訴になる事件。この事件の背景を知れば、公判維持できると思えないでしょう。ただ、弁護士が最低限の仕事をするかどうか。刑事事件でちゃんと仕事できて頑張る弁護士はほとんどいません。」(2018年5月15日 https://twitter.com/onnazukinp/status/996317817216483328)
「和姦の動画を残すこと自体が悪いと言う人は単純に頭が悪い。
冤罪の可能性を0にしてから言うべき。
本当に事実か分からない女の証言だけで懲役になったら悲惨すぎる。(後略)」(2018年6月26日 https://twitter.com/onnazukinp/status/1011504806144323585)
逮捕直前の8月後半になると焦りを感じたのか、事件を取材して記事を書いた女性ライターにツイッター上で「曲りなりにも記者なら真実見ましょうね」(https://twitter.com/onnazukinp/status/1034792571417980928)と噛み付いている。まったくの難癖だ。