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中国人留学生の切羽詰まった犯行

 捜査本部は犯行グループの1人、東京都江戸川区に住む中国籍の元日本語学校生、安峰容疑者を殺人容疑で指名手配。東京に捜査員を派遣して、その姿が目撃されていた江戸川区などで聞き込みを開始する。そして6月28日、JR総武線新小岩駅に張り込んでいた捜査員が容疑者を発見。殺人、住居侵入などの疑いで逮捕した。

「容疑者を捕まえたのは山形の捜査本部の手柄だ。捜査員が山形から東京に出張してきて、居場所を捜査し、最終的に捕まえた。情報班は縁の下の力持ち的存在だ。自分たちが前に出ても情報の価値は上がらない」(元刑事B)

 捜査本部では安容疑者の供述から実行犯グループを割り出し、他に中国人2人と日本人1人を共犯として逮捕。逮捕された中国人らは、日本語学校の留学生として入国していた。事件当時も不法残留などではなく、正規滞在の留学生だったが、授業料も払えず生活は切羽詰まっていたらしい。金欲しさに犯行に加わっていたのだ。

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「地方の中国人は来日する際、親戚などから借金をして来る者も多かった。金の余裕はないから、日本で稼がないといけない。だが日本語ができなければ思うようには稼げない。手っとり早く楽に金を稼げる口があれば、犯罪とわかっていても手を染めてしまう。1度やってしまえば、あとはずるずると落ちていく」(元刑事B)

中国人犯罪組織には日本人も絡んでいる

 その後の捜査で、ある中国人犯罪組織が、被疑者らを窃盗の実行犯として雇ったことが判明した。組織は訪日中国人向けの中国語の新聞にアルバイトの募集広告を載せたり、「楽に儲かる仕事がある」と人づてで金のない留学生らを集めたりしていたという。

 日本社会の中で外国人犯罪組織が作られ、プロではない実行犯が含まれるようになってきたのには、犯罪グループが一度の犯行で、できるだけたくさん稼ごうとし始めたためもあると元刑事Aは話す。

「外国人強盗団によって、ビル1棟丸ごとすべての部屋が窃盗にあうという事件もあった。山形の事件もそうだが、事件現場まで犯人を連れていったのは雇われた日本人だ」

 道も知らず、土地勘もない外国人だけでは、狙う家がどこにあるのかわからない。外国人強盗団といっても、その実行のどこかに日本人が絡み始めていたのである。

山形県警、警視庁ともに警察庁長官賞を受賞

 犯罪のターゲットとなった旧家の情報は、地元の暴力団から東京の暴力団組織の上部団体へ流され、犯罪の実行部隊である中国人犯罪組織に流されていた。犯罪組織は事件当日、雇った中国人らを、運転担当の手配師に現場まで運ばせていたという。犯人らは被害者宅を下見していたが、事件当日、いないはずだった主婦が玄関先に出てきたため、面倒になり刺したのだという。

 この事件では実行犯4人、山形まで彼らを運んだ運転役をはじめ計8人が逮捕された。実行犯らには裁判で実刑が言い渡され、運転役の男にも有罪判決が出ている。

 山形県警はこの事件解決により、警察庁長官賞を受賞。警視庁国際捜査課も、この情報だけで警察庁長官賞を受賞した。刑事事件の情報だけで長官賞を授与されたのは、おそらくこの時が初めてである。