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東野 「俺の好きなワインだ」とかね(笑)。

福山 本当に贅沢な時間です。恋愛に例えると、ふたりでこっそり行ったデートの話がちょっと書いてある感じですかね。「もう~、こんなところに書いちゃって。圭吾さんったら」みたいな。

東野 ははは(笑)。

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福山 「恥ずかしいな。でもうれしいな」って。

東野が驚いた会議室でのワンシーン

東野 『聖女の救済』の小説では内海薫がiPodで福山雅治の曲を聞いたりしてますからね。

福山 あれも嬉しい驚きでした。小説は、キャストの顔だけではなくて、いろんな情景とか匂いとか触感とか――五感ですね。脚本は、映像にするために小説の詳細な表現を削ぎ落としながら行間を増幅させ、それを映像化するスタッフさん達と俳優達が可視化していくという作業。でも、小説はすべて文章のみで表現していかなきゃいけない。役者として、自分ならどう演じるかという読み方をまったくしないわけではないけど、それよりはまず、小説は小説として、一読者として楽しんでますね。

――小説の映像化となると、カットされるエピソードや脚色はつきものですが、今回の「沈黙のパレード」で「ここをこう変えたのか」と思った箇所はありましたか?

東野 序盤で、今回の事件の被疑者との因縁に気付いた草薙が、会議室で吐いてしまったのにはビックリしましたね。原作にそんな場面はないですから。でも、あれだけで伝わるんだなと。あの時の草薙の心理は小説では何ページも使って書いてるんですが、それがあのシーンひとつで伝わる。役者さんの演技も含めて、映像の力だと思います。

 あと、あるシーンで、草薙のところに湯川がニッコリしながら現れるシーンがあるんですけど、草薙に対してあんなに好意的に登場した湯川は初めてかもしれないですね。

福山 あれは西谷(弘・監督)さんの確信犯としての狙いのカットでして。

東野 そうなんですか。

福山 あのシーンはああしたいんだ、と。草薙がとても辛い状況にある場面なんですが、「苦しんでいる人のところにこれぐらいの(明るい)感じで行っていいんですか?」って尋ねると、「いや、それが狙いですから」と。草薙の心中など全く意に介してないような感じで、っていうのをやりたいんだと言われて、なるほど、わかりましたと。心配そうな顔をしてじっとり草薙に会いに行くというよりは、湯川だからこそできるトンマナですよね。

東野圭吾さんと福山雅治さんによる対談「『ガリレオ』の秘密」全文は、「文藝春秋」2022年10月号と「文藝春秋 電子版」に掲載されています。(ガリレオシリーズ特設サイト

文藝春秋

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『ガリレオ』の秘密