福山 いえいえ、実際、演じる方も本当にやりやすいです。ありがとうございます。ただ……、連続ドラマ第1シーズンと「容疑者X」の頃の髪型が、ちょっと毛先を遊ばせすぎてるんですよね。そこはちょっと……反省しています(笑)。その時代ではよしとされていたことなので、今振り返ってもしょうがないんですけど。
東野 若かったんだからいいじゃないですか(笑)。
福山 すみません……(笑)。
東野 私のように、本を読む時に映像を思い浮かべる人って多いと思うんです。こうして映画やドラマとして映像化された後では、小説の読者も福山さんをイメージしないわけがない。ほとんどの人が、湯川のシーンでは福山さんの顔を思い浮かべ、草薙刑事のところでは北村一輝さんの顔を思い浮かべ、内海刑事では柴咲コウさんの顔を思い浮かべて読むと思うんですよね。それを、「そうやって読まないでくれ」なんてバカなことを言ったってしょうがない。だったら上手に利用して読みやすいように書きますもんね。「ちょっと福山さんのイメージじゃないな」ということは書かないですよ。福山さんに「俺のことをどれだけ知ってるんだ」と言われそうですけど。
福山 いえいえ。小説も全部読ませていただいてますが、これは僕にとってすごく贅沢な時間です。「ガリレオ」の新作を最初に読ませていただく時というのは、まず、「湯川学をこの地球上で演じられるのは僕だけだ……」と思って読んでいるわけです。「おお、今回はこんな僕なんだ!」と(笑)。で、何度か東野さんとプライベートでお食事させていただいた時に、僕が持って行ったウイスキーがあるんですけど、その同じウイスキーが小説の中に登場したりするわけです。そういう楽しみを練り込んでくださる。そこを読んだときは「あれだ!」と。「あの時のウイスキーが出てきたな」と人知れずニヤリとするわけです(笑)。
東野さんと食事したとか、こういうお酒を飲んだというのは特に秘密にしているわけじゃないけど、そういうプライベートなものが作品に少しずつちりばめられて練り込まれているのを読むと、「これはあの時のあれを、東野先生は思い出しながら入れてくれたんだな」と思うわけです。これはもう、この上ない贅沢ですよね。「東野さんと僕だけのエピソードだ」と秘め事のようにときめきながら読めるんですから(笑)。