でも、昔から本が大好きだったんです。実家には本がたくさんあって、高校時代は作家に憧れていた時期もあった。ただ、自分ではどう書いていいかわからないし、小説はムリだよなってサジを投げていた部分がありました。
だから、執筆の話がきたときは、編集長の「高見沢さんは小説を書けます」という言葉に、「できるの? うそ?」って思いながらも、ここを逃したらもう二度と書かないかもしれない、還暦過ぎの初挑戦をしてみようという思いがあったんです。
そのときに、やっぱり、挑戦に年齢は関係ないって実感しました。やろうと思ったときが始まりなんです。セカンドライフを求めている方はたくさんいると思うけど、やっぱり何事もやろうとしないと始まらないもんね。「ああなればいいなぁ」とか「そのうち……」では、できないんですよ。ただ、背中を押してくれるきっかけはあった方が良いかもしれませんね。
――不安よりも、まずはやってみようと。
高見沢:単純なのかな。「できるって言うからできるはずだ」という暗示をかけました(笑)。あまり深刻に考えない方が意外とうまくいくかもしれないですね。おかげさまで、小説を書くようになってから、歌詞も変化して、歌詞を作るスピードも早くなりました。メロディーに歌詞をつけるのと、物語を作るのとでは全く違う脳を使うから、逆にいい形で刺激し合っています。
しびれるほどの快感も味わえる
――多方面でご活躍の高見沢さんですが、人によっては「趣味を仕事にしない方がいい」、という方もいます。高見沢さんにとって音楽は、今は趣味ではなく仕事になりましたが、その辺りはいかがですか?
高見沢:趣味を仕事にしない方がいい、その通りですよ! ただ、趣味を仕事にするとね、しびれるほどの快感も味わえるんです。一生懸命に曲を作って、メンバーの2人が気に入ってくれる。スポットライトを浴びながらステージに立ち、3声のコーラスが会場に響きわたる。すると、客席からたくさんの熱い声援が届くんです。それは本当に嬉しいし、言葉に言い難い感動があります。
僕も、なかなかうまくいかないときがありました。ヒット曲『メリーアン』を出してからも、これで少し楽になるなと思ったら、ディレクターから「次はどうする?」って言われて。「一発で終わるか、10年続くグループになるのか、次にかかってる」って言われるわけです。えー、またやるんだと思って、次の『星空のディスタンス』が売れてほっとしていたら、また「次はどうする?」って、終わりがないんです。延々と中間テストを受けてるみたいな感じです(笑)。