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「バットが届くところは全部ストライクと思ってる」“天才”広島・西川龍馬の真髄に触れた日

文春野球コラム ペナントレース2022

2022/10/01

 皆さんはじめまして、広島東洋カープでピッチャーをしていました横山弘樹です。

 今回はカープの攻撃の中心、西川龍馬という男について少し思い出話も込みでお話したいと思います。

 彼といえば、"天才打者"。

 今のプロ野球界で一番この言葉が似合うバッターではないだろうか。

 今や世界と戦う鈴木誠也や、カープの大先輩山本浩二さん、ライバルチームのエース菅野智之さんにまで天才と言わしめるその所以とは……。

西川龍馬

「どこがストライクなんか分からん」

 "天才・西川龍馬"

 彼とは同期ということもあり、入団当初からとても気が合う友達としてもよく交流していた。

西川龍馬、大瀬良大地、筆者・横山弘樹(本人提供)

 そんなある日、なんの気なしに質問を投げかけたことがあった。

「龍馬ってなんでそんなに打てるの?」

 僕はピッチャーでしたがバッティングも好きだったので打てるようになりたかった。

「いや僕も打てんよ。てかどこがストライクなんか分からんもん」

 いやいや、ずーっと打ち続けてますやん。と思いながら

「ちなみに打席ではどんな感覚で打ってるの?」

 と続けて聞いてみた。

 ここで返ってきた答えに軽く5秒ほど思考が停止してしまった。

「バットが届くところは全部ストライクと思って打ってる。バットが当たらんとこはボール、みたいな。そんな感じっすね」

 なにか聞いてはいけないものを聞いてしまったような気がした。

 ワンバウンドの球をあたかも簡単にヒットにしたり、野球ファンから変態バッティングとまで呼ばれるほどの技術の高さはここから繋がっていたのかもしれない。

 本人は軽い感じで話していたが、自分の感性をとことん信じていられる彼ならではの答えだなと、僕は数年前のこのことを今でも忘れられずにいる。

 今となってはまた違った感覚でいるのかもしれないが、この当時よりも反応速度、身体の使い方、対応能力、心の整え方、全ての精度が抜群に高くなっており、そこに配球の読みやデータなどが加わることにより、進化が止まる事なく今もなお成長し続けている。