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 個人間カーシェアの場合はとくに、こうした確認の難しさが貸主・借主双方にとってのリスクとなるだろう。たとえば借りる側の立場として、Cさんは次のような体験をした。

「車を返却してから1週間ほどして、オーナーから『貸し出す前にはなかったキズが見つかったので賠償してほしい』という連絡が来たことがあります。

 添付された写真にはフロントバンパー裏の擦り傷が写っていたのですが、ちょうど借り受け時には撮影していなかった部分だったんです。

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写真はイメージ ©iStock.com

 こちらとしてはまったく身に覚えがなかったので、『私の運転中にキズがついた事実をドライブレコーダーなどで立証してもらえない限り支払えない』と返信しました。そこからは何度か『人間性を疑う』といった罵倒じみたメッセージが送られてきましたが、内容証明などの具体的な話には進めてきませんでしたね」

 カーシェアやレンタカーをめぐる同種のトラブルは、国民生活センターにも多く報告されており、同センターによる注意喚起も行われている。基本的に、賠償請求を行う際には「請求する側」が立証責任を負うことになるが、その傷が事前チェックで漏れていた場合など、請求される側にとって不利に事が運ぶ可能性は否定できない。そもそも、言いがかりを付けられた時点で相当なストレスにもなるだろう。

「証拠隠滅」を図る借主

 反対に、貸主側にとっては、「つけられた傷についてシラを切られる」というリスクがある。とくに個人間カーシェアにおいては、貸出・返却時に双方の対面を必要としないシステムが導入されているケースもあり、返却から車両状態の確認までにタイムラグが生じることもしばしばだ。

 このシステムを介して車を貸し出していたDさんは、返却後に車両を確認した際、衝撃的な光景を目の当たりにする。

「返却後、車の状態を確認する前に利用者の方からメッセージがあり、『実は借りている最中、駐車中に傷をつけられたようだ』と報告されました。

 そのときは小さく擦っただけだろうと思ったのですが、実際に見てみると、助手席側の前から後ろまで長く深い傷がつけられていたんです。そのうえ、ドライブレコーダーからはSDカードが抜かれていました。後からわかったことですが、傷は運転中に擦ってできたもので、SDカードも抜いたうえでフォーマットされていました」

 このように、車が傷ついたことを事後報告されるケースのほか、そもそも報告すらされないケースもある。このDさんの場合には、借主から報告があり、メッセージ上のやり取りが継続できたこと、さらにDさんの求めに応じて保険会社への届け出がなされたこと自体は幸いだった。