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借りた車で時速200km超の暴走行為、全損事故でドラレコ映像隠蔽……個人間カーシェアの“ヤバい利用者”

2022/10/01

genre : ライフ, 社会

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全損扱いも、なかなか保険金が受け取れず……

 しかし厄介なのが、カーシェアの貸出車両に対する保険である。運営会社は「300万円まで補償」など上限金額を打ち出したプランを用意しているが、当然これを請け負うのは一般的な損害保険会社だ。そのため、実際の補償上限は通常の車両保険と同様「車両の時価額」であり、全損事故や盗難被害に遭った場合に買い替え費用が賄えないケースも多い。

 先のDさんのケースでも、修理費用の見積もりは100万円を超えたが、保険会社が認定する補償額は40万円程度だった。

「はじめは修理を希望しましたが、費用が大幅に補償額をオーバーするため、車を買い替える方向で考えました。しかし問題だったのが、『実際に新しい車を買った領収書がないと、保険金が支払えない』と言われたことです。被害に遭ったこちらが先にお金を払わなければならず、『直せないし買い替えられない』という状態がしばらく続きました」

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 このような「経済的全損」のケースの場合、通常の車両保険であれば、買い替え・修理を問わず、認定された補償額が支払われる形が一般的である。しかし、Dさんが受けた説明では、ここで適用される「借用自動車の車両復旧費用特約」は、買い替えの事実を認定された後でないと保険金が支払われないのだという。

「全損事故に遭ってから実感したことですが、カーシェア保険の被保険者は持ち主ではなく利用者なんです。貸主は愛車を傷つけられても、保険会社から『相手側』として扱われます。私の場合、保険会社から丁寧な説明などをしてもらえませんでした」

 結局、保険の支払い条件に納得できず、また謝罪もなく開き直るような利用者の姿勢に対する憤りもあり、Dさんは弁護士に相談のうえ、利用者に対して少額訴訟を行った。提示した額での和解がなされたが、訴訟費用など諸々のコストを考えると、保険会社からの補償額とほとんど変わらない結果だったという。

便利だが課題も山積みの個人間カーシェア事業

 個人間カーシェアは、新しい時代のカーライフを支える画期的なサービスとして期待されている。貸主・借主双方に十分なメリットがあるほか、都心部の限られた駐車スペースや、資源の活用という社会的意義の面でも、大きな役割を担いうるサービスである。

 とはいえやはり、個人が所有する車両を貸し出すには大きなリスクが伴う。もちろん、貸主・借主双方が、あらかじめリスクを入念に見通しておくことも重要ではあるだろう。しかし、個人間カーシェアのさらなる普及に向け、より多くの利用者がトラブルなく使えるシステムを構築するうえでは、運営会社による適切なプラットフォームの整備・管理が求められる。トラブル時のフォロー体制や、生じうるリスクについて、積極的に(小さな文字の約款ではなく)情報を開示していく必要がありそうだ。

借りた車で時速200km超の暴走行為、全損事故でドラレコ映像隠蔽……個人間カーシェアの“ヤバい利用者”

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