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「心臓移植、肝臓移植を続けるか再考する時期…」東京女子医がハイレベル医療から撤退を示唆 患者の命を“見捨てる“経営陣の非情さとは?

「心臓移植、肝臓移植を続けるか再考する時期…」東京女子医がハイレベル医療から撤退を示唆 患者の命を“見捨てる“経営陣の非情さとは?

東京女子医大の闇 #9

2022/10/01
note

心臓と肝臓の移植からの撤退示唆は2人の教授に対する牽制か?

 女子医大で1例目の肝臓移植に関わった外科医の本田宏氏(元女子医大・腎臓病総合医療センター)はこう述べる。

「移植手術後の患者には、拒絶反応や感染症など様々な合併症に対する専門的な医療が必要で、一般病院での対応は困難です。女子医大が移植医療から撤退することは、患者さんに対する責任放棄という倫理的問題が看過できませんし、大学病院としてレベルダウンします」

 女子医大の経営陣が、心臓と肝臓の移植からの撤退を示唆した理由として、こんな憶測もある。「質問書」に名を連ねた7人の中で、リーダー格である心臓血管外科・新浪博教授と、消化器・肝胆膵外科の本田五郎教授は、それぞれ心臓と肝臓の移植手術を担当する診療科の医師なのだ。つまり、2人の教授に対する牽制だったのではないか――。

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 22日に行われた説明会に、2人の教授の姿はなかったという。その理由を知る関係者はこう述べた。

「新浪教授は他院で手術を行う外勤日でした。岩本理事長に面と向かって矛盾を指摘した本田五郎教授は海外出張だったそうです。お二人の予定を経営側が知らないはずがありません。当日朝に説明会を通知したのは"奇襲攻撃"のつもりでしょうか」(女子医大関係者)

岩本絹子理事長(東京女子医科大学120周年記念誌より)

6人の小児集中治療専門医が今年3月末までに全員辞職

 女子医大で深刻な危機が始まった原点は、小児ICUの“事実上の閉鎖”にある。

 2021年7月から運用がスタートした小児ICUは、重症の小児患者の命を次々と救っていたが、リーダーの前特任教授をはじめ、6人の小児集中治療専門医が今年3月末までに全員辞職した。この経緯について経営陣の回答を要約すると、次のとおりだ。

小児ICUチームは2022年3月に解体された(Facebookより)

「A前特任教授の赴任前、給与額について岩本理事長の同意があったと報道されているが、その事実はない。人事の決裁は丸義朗学長である」

「A前特任教授に規定の給与を支払ったが、それでは退職するしかない、という意向だった」

「丸学長らが勤務を継続していただきたいと慰留交渉を行った」

 この回答は、関係者の証言と多くの点で矛盾する。

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