滝沢 可燃ゴミの中に割れたガラスが混じってて、掴んだ途端に血が吹き出たことがあります。あとは、寡黙なベテラン清掃員のおじさんが大声で「触るな―――っ」とダッシュで止めに入ってきたことがあって。そのとき僕が掴もうとした袋の中には、使用済みの注射針がびっしり入っていました。そのゴミがあった場所は普通の住宅街で、残りは全部普通のゴミ。1つだけ爆弾が混じってたんです。
――予測不可能なものがふっと紛れ込んでいるのが恐ろしいですね。ベテランになると、危険なゴミにいち早く気づけるんですか?
滝沢 さっきの方とは別の方なんですけど、ゴミのカリスマみたいなベテラン清掃員がいて、ポリバケツを見ただけで「ありゃ重いわ」って。で、持つとマジで重いんです。
――透視能力みたいですね。
滝沢 「ゴミの気ィ見りゃわかんだ、気ィ見りゃ」って言ってますね。ときどき、これもけしからんゴミですけど、自分がゴミを出し忘れたくせに、クレーム入れて清掃員に再回収させる人がいるんです。そういうゴミは、「申し訳なさそうな気」が出てるって。
――嘘をついて出したゴミだから、その後ろめたさがゴミに出てると。
滝沢 「さっき慌てて置かれたから肩身が狭いんだ。収集時間に合わせてちゃんと置かれたゴミは堂々としてて佇まいが違うだろ」って言うんですけど、それはさすがに嘘じゃないかと(笑)。
でも、ベテラン清掃員の話でもすごく共感したのが、「昔も今も、金持ちほどゴミが少ない」という話。これは本当にそうなんですよ。
ゴミの量からわかる“日本人の今”
――お金持ちほどモノに溢れた生活をしていそうですが、ゴミは多くないと。
滝沢 はい。一般的な住宅のほうが、ゴミの量は圧倒的に多いです。ファストファッションや100均の影響もあって、みんなバンバン買ってバンバン捨てるんですよ。緊急事態宣言期間中は100均のプラスチックカゴを死ぬほど回収しました。あとは梅酒の瓶。日本人は梅酒の自作を禁じられたのかと思うほどの量でしたね。
――プラスチックカゴも梅酒の瓶も、買ったはいいけど結局ほとんど使わずホコリをかぶっていそうなものですね。
滝沢 金持ちのゴミが少ないのは、本当に欲しいモノしか買わないからじゃないかと思いました。高級住宅地からは大量の缶チューハイも出てこないし、爪切り7つとかも出てこない。「安さ」でモノを買わないし、たぶん室内が整理整頓されているから、無駄な買い物もない。で、その傾向はバブルのときも今も変わっていないんです。