「収入の不安定な男性は避ける」「親には言えない」「月4000~5000円を課金」……マッチングアプリで結婚する若者たちの実像とは? ノンフィクションライター・石戸諭氏による「“マッチングアプリ婚”男と女の本音」(「文藝春秋」2022年11月号)を一部転載します。

芸能界を騒然とさせた“告白”

 それは、業界の空気を一変させる告白だった。2022年4月、タレントの新山千春が、14歳年下の20代の男性と交際していることを公表。自身のユーチューブチャンネルで、「アラフォー女優がマッチングアプリやったら奇跡が起きた」と題して、自身のプライベートを詳細に語ったのだ。友人の勧めでアメリカ発のアプリを使ったこと、相手がサンフランシスコ在住の日本人デザイナーであることなどを赤裸々に明かした。

 この告白に社会が驚いたポイントはたった一つしかない。これだけ名前の知られた芸能人がマッチングアプリを使って、恋を実らせたことである。そこから先の反応は大きく二つに分かれるように思える。

 一方にアプリを介しての出会いは危険が伴うものであり、かつて社会問題化した出会い系サイトのようにリスクが高いのではないかと考える人々がいる。片や、なるほど出会いの場としてアプリを使うのは当たり前だと思う人々が存在している。

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世界でトップシェアを誇る「Tinder」

 ここに一つのデータがある。三菱UFJリサーチ&コンサルティングが2021年に発表した「マッチングアプリの動向整理」だ。マッチングアプリを知っていると答えた層は20代で実に68.2%に達し、多数派を形成している。現在利用している、あるいは過去3年以内に利用したことがある、と回答したのは28.9%と3割近くいる。

 ところが、40代になると「知っている」層は33.5%まで下がり、「利用したことがある」も――無論、すでに婚姻している、パートナーがいるといった理由も大きいのだろうが――6.8%しかいない。これより上の世代は推して知るべしといったところか。年長世代にとって、マッチングアプリは身近なものではなく、イメージでしか語られないという現実がここに示されている。若い世代にとって、マッチングアプリはすでに日常の一部だが、親世代には不可視な存在になっているのだ。

2020年11月、警視庁板橋署の一日署長に任命され、商店街での特殊詐欺被害防止・暴力団追放パレードの出発前にあいさつする女優の新山千春さん ©時事通信社