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「毎月3人程度と」「収入の不安定な男性は避けます」マッチングアプリで結婚する若者たちの“理想と現実”

2022/10/17

「収入の不安定な男性は避ける」「親には言えない」「月4000~5000円を課金」……マッチングアプリで結婚する若者たちの実像とは? ノンフィクションライター・石戸諭氏による「“マッチングアプリ婚”男と女の本音」(「文藝春秋」2022年11月号)を一部転載します。

芸能界を騒然とさせた“告白”

 それは、業界の空気を一変させる告白だった。2022年4月、タレントの新山千春が、14歳年下の20代の男性と交際していることを公表。自身のユーチューブチャンネルで、「アラフォー女優がマッチングアプリやったら奇跡が起きた」と題して、自身のプライベートを詳細に語ったのだ。友人の勧めでアメリカ発のアプリを使ったこと、相手がサンフランシスコ在住の日本人デザイナーであることなどを赤裸々に明かした。

 この告白に社会が驚いたポイントはたった一つしかない。これだけ名前の知られた芸能人がマッチングアプリを使って、恋を実らせたことである。そこから先の反応は大きく二つに分かれるように思える。

 一方にアプリを介しての出会いは危険が伴うものであり、かつて社会問題化した出会い系サイトのようにリスクが高いのではないかと考える人々がいる。片や、なるほど出会いの場としてアプリを使うのは当たり前だと思う人々が存在している。

世界でトップシェアを誇る「Tinder」

 ここに一つのデータがある。三菱UFJリサーチ&コンサルティングが2021年に発表した「マッチングアプリの動向整理」だ。マッチングアプリを知っていると答えた層は20代で実に68.2%に達し、多数派を形成している。現在利用している、あるいは過去3年以内に利用したことがある、と回答したのは28.9%と3割近くいる。

 ところが、40代になると「知っている」層は33.5%まで下がり、「利用したことがある」も――無論、すでに婚姻している、パートナーがいるといった理由も大きいのだろうが――6.8%しかいない。これより上の世代は推して知るべしといったところか。年長世代にとって、マッチングアプリは身近なものではなく、イメージでしか語られないという現実がここに示されている。若い世代にとって、マッチングアプリはすでに日常の一部だが、親世代には不可視な存在になっているのだ。

2020年11月、警視庁板橋署の一日署長に任命され、商店街での特殊詐欺被害防止・暴力団追放パレードの出発前にあいさつする女優の新山千春さん ©時事通信社

コロナ禍で「11万の結婚」が失われた

 若年層におけるマッチングアプリの浸透には、見過ごせない社会的背景がある。東京大学准教授の仲田泰祐氏と東京財団の千葉安佐子氏が2022年2月に発表した研究によれば、新型コロナウィルスの流行とそれにともなう対策は多くの出会いを奪い、この2年間で婚姻数はおよそ11万件も減少したという。2021年には、婚姻数・出生数がともに戦後最少を記録している。これらのデータは男性の4人に1人、女性の6人に1人が結婚を選ばない時代を象徴している。少子高齢化は新型コロナによって、さらに加速したのだ。