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 ペアーズでは男性側の支払う金額が増えれば、月に使える女性への“いいね”の数も増えるようになっている。アクションを起こすにもカネが要るのだ。出会いの確率も金額によって変わるということである。男性が無料登録で使える機能もあるが、女性とのメッセージのやり取りに制限がかかってしまい、実質的に有料会員にならなければ、出会いまでは辿り着かないように設計されている。これも男女の均衡を保つための工夫なのだという。

毎月3人程度と出会う

 では、実際にマッチングの現場では何が起きているのか。今回何組かのカップルを取材したが、なかでも最も標準的な“アプリ婚”を遂げたカップルの例を紹介しよう。

 関西在住の宮下夫妻(仮名)は、夫は会社員、妻は栄養士で、ある施設の職員として働いている。マッチングアプリで出会い、3年の交際を経て2019年に結婚した。現在、夫は32歳、妻は33歳で、アプリを使い始めたのはともに20代後半からだという。

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マッチングアプリ婚は珍しいものではなくなりつつある

 20代も後半に差し掛かろうとしていた2016年前後、当時、関東の本社で働いていた夫に関西支社への人事異動が告げられた。結婚を前提とした女性との交際を考えていた時期に、誰も知り合いがいない土地に赴任することになってしまった。

 彼が出会いを求めるべく手を伸ばしたのは、マッチングアプリだった。大学時代の友人が使っており、その友人もまたアプリで知り合った女性と、結婚を前提とした付き合いを始めていたというのも大きかった。その友人の証言である。

「僕は複数のマッチングアプリを使っていましたが、使っているうちに段々と各アプリの特性の違いがわかるようになってくるのです。近くにいる相手とすぐに会えることが特徴のアプリもあれば、共通の趣味でつながりを持つことができるアプリもある。使い方も違えば、出会い方も違う。いずれにせよ無料だと限界があるとわかったので、僕は最大で月4~5000円を課金していました。

 空いた時間があれば、仕事中でもアプリをチェックしていましたね。気になった女性に送ったメッセージの返事が来ていないか、“いいね”を誰に送ろうか、なんてことを日々考えていました。親しい周囲の友達にもアプリを使っていることを隠していませんでした」

 彼はアプリで知り合った女性と毎月3人程度、リアルで会っていたという。そのなかの一人と結婚を前提とした付き合いを始めた。

ノンフィクションライター・石戸諭氏による「“マッチングアプリ婚”男と女の本音」全文は、月刊「文藝春秋」2022年11月号と「文藝春秋 電子版」に掲載しています。

文藝春秋

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“マッチングアプリ婚”男と女の本音