役目を終えた「汐留」のその後

 そして汐留駅が営業を終えてから約半年後に国鉄は民営化。新橋駅のすぐ裏手という、超をいくつつけても足りないくらいの一等地に突如現れた広大な空き地は分割民営化に伴って国鉄清算事業団に移管される。民間に売却してその利益を国鉄債務の返済に充てることになったのだ。

 

 当時はあまりの一等地ということでどのように処理されて再開発されるのか、かなり注目を集めたようだ。だが、当時は不動産価格が高騰に次ぐ高騰というバブル景気の真っ只中。そんな中で、超一等地の事実上の国有地が売却されると投機熱に拍車をかける。

 そんな思惑があったのかなかったのか、結局汐留駅(つまり日本鉄道発祥の地)は長らく塩漬けにされてしまう。ようやく売却がはじまったのはバブルが弾けたあとのこと。ずいぶん安値での売却になったようだ。

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 こうして1998年までに汐留駅跡地の売却は終わり、再開発が進んで2000年代に入ってから次々に高層ビルが生えてきた。気がつけば、150年前にはじめて鉄道が走った発祥の地は、真新しい巨大高層ビル群に生まれ変わっていたのである。

 

売却や再開発に合わせて行われた発掘調査。何が出てきたのかというと…

 ちなみに、駅跡地の売却やその後の再開発にあたって遺跡調査も行われており、その際には開業当時の鉄道のきっぷや酒瓶、皿などが発掘されたとか。明治はじめの150年前、鎌倉殿の時代などと比べればずいぶん最近に感じるかもしれないが、鉄道開業の時代はすでに“発掘される時代”なのだ。

 
 

 新橋駅周辺の繁華街の喧噪から離れ、汐留シオサイトにやってくると、ビジネスパーソンが時折行きかうばかりの静かなオフィス街。ただひとつ日本テレビの周辺だけは、グッズショップなどに訪れる人やそらジローと木原さんに会いに来る人で賑わっている。

 
 

 ここが150年前の鉄道のスタート地点であったということは、どれくらいの人が意識しているのだろうか。せっかくの節目の年、鉄道発祥の地・汐留シオサイトを歩いて、明治初めの人たちがどのような心持ちで鉄道に接したのか、などと想像を膨らましてみるのもおもしろいかもしれない。

写真=鼠入昌史

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 1872年10月14日に新橋~横浜間が開業して以来、2022年で150年を迎える日本の鉄道。日本各地には、まさに「鉄道の歴史を変えた街」が数多くある――。

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鉄道の歴史を変えた街45

鼠入昌史

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2022年10月7日 発売

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