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 そして’76年秋、特撮・アニメ好きな筆者が、猪木さんの存在を強く意識する作品が登場。『ウルトラマン』シリーズで知られる円谷プロが制作した特撮ヒーロー『プロレスの星 アステカイザー』(原作は『マジンガーZ』[’72年]の永井豪先生)で、猪木さんは第1話に本人役で特別出演。猪木さんがアステカイザーの正体では? と聞かれ、「俺? 俺じゃないよ。しかし、アステカイザーとは一度戦ってみたいな」と答えるセリフもあった。

 この番組にはジョージ高野さんや佐山聡さん、藤原喜明さんら当時の新日本プロレスの新人選手も多数出演し、彼らの顔見せも兼ねていた。まさに猪木さん率いる新日本プロレスの全面協力で作られていたのだ。

©文藝春秋

 5年後の’81年、『タイガーマスク』の続編『タイガーマスクII世』に猪木さんはかつての馬場さんのポジションで登場(声は銀河万丈さん)。

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 タイガーII世をサポートするが、なんと彼らの前に立ちはだかる宇宙プロレス連盟の黒幕がアラブの石油王! “一度でもタイガーが負ければ石油の輸出をストップする”と脅され、政治とプロレスの板挟みとなって苦悩する猪木さんの姿が、後の政治家デビューを予見しているようで驚く。

「テレビのデビュー戦」は生試合でも録画中継でもなく…

 そんな猪木さんだが、実は猪木さんのテレビ・デビューは生試合でも録画中継でもなく、ドラマだった。昭和30年代、1962年にさかのぼる。

『タイガーマスク』の原型ともいうべき梶原一騎先生原作(作画はタツノコプロの創設者・吉田竜夫先生)のプロレス漫画『チャンピオン太(ふとし)』をテレビ化した同名ドラマで、猪木さんは第1話に登場。

 主人公・大東太(だいとう・ふとし)の師匠である力道山(本人役でレギュラー出演)に挑戦するレスラー“死神酋長”役での出演だった。……というか、この時は芸名も死神酋長。本決まりではなかったこの芸名を力道山さんがすっかり気に入り、この名前で実際に正式デビューさせようとしたという。それを猪木さんが拒否し、梶原先生の立会いもあってアントニオ猪木に決まったという逸話がある。

©文藝春秋

 実は師匠の力道山さんとの対戦もこの撮影が初。梶原先生の回想によると現場でもガチバトルだったそうで、プロレス・ファンにはたまらない超レア映像となっている。ちなみに、猪木さんは第4話にもゲスト出演。今度は「猪木完至」名義で覆面レスラーのストライブ・スネイク役を演じた。