また、その後誕生したトランプ前大統領と、Qアノンが垂れ流したディープステートのような陰謀論、さらに大統領という枢要な要職にあるトランプさん自身がTwitterを通じて積極的にメディア不信と陰謀論を書き連ねました。ついにはひとつの民間のプラットフォーム事業者に過ぎないTwitter社が、企業の判断でトランプさんのアカウントをBANし、法律や裁判所の仕組みによらず勝手な判断で表現の自由を封じて良いものなのか、いや、ガセネタ流す人間は現職大統領であろうと民間の判断でBANしてよいのだと喧喧囂囂たる議論となったのは記憶に新しいところです。
自由な情報の流通は国民の権利であり、民主主義の重要な要素である反面、人間はこうも簡単に騙され、陰謀論を信じ、不適切な判断の果てに行動に移した結果、死者まで出したアメリカ議会の暴徒闖入という大事件に発展したのは、フェイクニュース対策の重要性を改めて示すものとなりました。
SNSの機能がフェイクニュースの運び手に
ただ、これらのフェイクニュース対策をどれだけ積極的に進めても、当時4chan、8kun他匿名掲示板で垂れ流される陰謀論を信じたアメリカ人など英語圏の人たちの目に「それはフェイクニュースでやんすよ」と歯止めをかけようとしたところで、陰謀論を信じるクラスターの中にまでは届かないというのが実際です。まだ陰謀論を信じていない人に何とかあっち側に転ばないようにするのが限界であって、ボランティアやNPOでの活動には限界があるし、また、英語圏で大量に失職した新聞記者やジャーナリストの受け皿になるのがせいぜいとも言えます。
裏を返せば、これらの陰謀論がなぜ広まっているのかと言われれば、実はMeta(FacebookやInstagram)やTikTok、Twitterなどプラットフォーム事業者がCGMと称してユーザーに自由な言論や動画をネットで垂れ流させ、SNSの機能を通じて繋がり拡散させるという仕組みそのものが、フェイクニュースの運び手として機能してしまってきた現実があります。ここには、今回SIAを、そして古田大輔さんを担いでJFCを組織したヤフー株式会社やGoogleにも問題悪化の原因はあるのではないかと指摘すべきところです。
日本語圏においては、ヤフーとLINEがデジタル上のニュース配信においては枢要なシェアを占めており、時事問題や芸能スポーツまであらゆるジャンルのニュースに関心のある日本人の相応の割合はヤフーを使って情報を摂取しています。
何をもって有害なコンテンツとするか問題
しかしながら、そのニュース自体だけでなく、そのページにぶら下げられたヤフーコメント(ヤフコメ)はヤフー側も対策を頑張って打っているものの控えめに言って無法地帯となっている現状があります。そうでありながら、彼らがヤフーコメントのサービスを閉じない理由は、それだけ多くの人が使う機能であり、そこにPVが生み出され、そのページに貼られた広告による収入が彼らの広告事業の生命線のひとつだからでしょう。