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特集神童は大人になってどうなったのか?

社会正義を追い求める「武蔵」の神童は、大人になってどうなったのか?

社会正義を追い求める「武蔵」の神童は、大人になってどうなったのか?

西室泰三、盛田昌夫、ノーベル平和賞、東大総長2代、芥川賞・直木賞作家

2018/01/22

武蔵神童にとって「ビジネスは鬼門」の理由

西室泰三氏 ©共同通信社

 武蔵神童にとってビジネスは鬼門なのかもしれない。

 西室泰三 (1954年卒)は慶應義塾大出身。東芝で社長と会長、日本郵政社長を歴任する。

 西室は東芝トップ時代にアメリカの大手原子力関連企業の買収、日本郵政トップ時代にはオーストラリアの大手物流企業の買収を進めたが、それによって1000億円単位の巨額の損失を出してしまう。東芝は大規模な事業縮小、リストラを進めざるをえなくなった。東芝を混乱させた責任は大きい。

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 ソニー創業者の盛田昭夫の次男、盛田昌夫(1974年卒)は、アメリカ・ジョージタウン大を卒業後、モルガン銀行を経て1981年にソニー入社後、執行役員常務を経て、2003年にソニー・ミュージックエンタテインメント代表取締役社長、2009年には同社代表取締役会長になったが、2015年に退任する。「グループ全体で進めている経営陣の世代交代の一環」がその理由だ。盛田は退任前、こう話している。志半ばだっただろうに。

盛田昌夫氏 ©文藝春秋

「今までソニーでハードもソフトも手掛けてきましたが、どんなときも『次はどんなドキドキすることをしようか』と社員たちと考えながら歩んできました。今のソニーはそうじゃなくなってしまった部分もあって少し残念ですが、これからの世代がまたソニーをドキドキする会社にしていってくれると期待しています」(日経BizGate「私の道しるべ 未来の日本へ リーダーたちのメッセージ」

「自分だけの幸せを追い求めることは、教育の目的ではありません」

 武蔵高等学校中学校の校長、梶取弘昌は東京藝術大出身の声楽家である。生徒には常日ごろ、「いいオタクになれ」と訴えている。

 梶取の教育論は、「教育の目的は、自分を磨き、自分が学んだものを社会に還元することです。自分だけの幸せを追い求めることは、教育の目的ではありません。学問を通し、知識を学び、それを咀嚼し外に向かって発信する。これができて初めて教育の目標は達成されるのです」(武蔵高等学校中学校 校長挨拶)。

 なるほど、合点がいく。

 やはり、武蔵神童はビジネスより、社会正義の追求、学問の探究、文化の構築がよく似合う。

(敬称略)

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