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官界、財界よりも圧倒的に「学界」

 武蔵神童は官界、財界よりも圧倒的に学界で活躍する場を求める。

五神真氏 ©文藝春秋

 東京大総長(第30代)の五神(ごのかみ)真 (1976年卒)、東京工業大学学長の三島良直 (1968年卒)がいる。五神が東京大のトップになったとき、武蔵OBは喜んだ。「東大総長を2人も出すなんて、うちが初めてではないか」。たしかに、新制高校(それに相当する旧制中学)出身で2人は武蔵が初めて。1人目の東京大総長(第24代)は有馬朗人 (1950年卒)で、文部大臣にまでなった。いまも武蔵学園学園長をつとめる。

 東京大名誉教授の柴田翔 (1953年卒)はドイツ文学を講じていた。ゲーテの『ファウスト』の翻訳は名高い。だが、60代以上にとっては、芥川賞作家としてのほうがとおりがいい。1964年の受賞作「されどわれらが日々――」は学生運動にかかわる学生の葛藤、生真面目さを描いた。

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 もう1人、武蔵OB芥川賞作家がいる。大岡玲 (1977年卒)。1990年に「表層生活」で受賞した。父は詩人の大岡信。東京外国語大出身。

 直木賞作家には景山民夫 (1965年卒)がいる。1988年に『遠い海から来たCOO』で受賞した。1960年代、慶應義塾大在学中から放送作家を生業としていた。ツービートなど芸人が出演する番組の構成を担当。その後、「幸福の科学」の熱心な信者となり、世間を驚かせた。

 最近、久しぶりに景山の名前がテレビで出てきた。発言者は北野武。「直木賞は景山民夫が獲ったから屁みたいなもんだと思うけど」(2017年8月、フジテレビの番組制作発表会見にて)北野は景山に嫉妬していたようだ。

景山民夫氏 ©文藝春秋

 景山民夫の放送作家の大先輩に高平哲郎 (1965年卒)がいる。赤塚不二夫、坂田明、内藤陳、たこ八郎、柄本明、所ジョージなどと行動を共にすることが多く、一方で、タモリの育ての親的な存在であった。『今夜は最高!』『笑っていいとも!』『オレたちひょうきん族』などに構成作家として関わっている。

 なるほど、武蔵神童は表現者としてカルチャーを作ってきた感がある。異才という言い方がピッタリだ。

「宇宙戦艦ヤマト」に「しくじり先生」まで……

 芸能関係では、「宇宙戦艦ヤマト」などアニメソングを歌いまくったささきいさお (1961年卒)がいる。

 また、俳優の宮川一朗太(1984年卒)は武蔵在学中に映画『家族ゲーム』に出演し、同作で日本アカデミー賞優秀新人賞も受賞した。早稲田大出身。競馬好きが高じて、「一口馬主」に投資して借金を背負い、嫁さんに愛想をつかされたと、テレビ「しくじり先生 俺みたいになるな!!」で懺悔したことがある。