テレビ番組『5時に夢中』や『ポップUP!』などに出演しているコラムニストの小原ブラスさん。ロシアで生まれ、日本に移住したのは6歳の時だ。所属事務所のタレント紹介資料には、こう書かれていたという。

「関西弁を喋る面倒くさい性格のロシア人、そしてゲイ」

 ここでは、小原さんが自らのアイデンティティや日本人の価値観を見つめ直した本『めんどくさいロシア人から日本人へ』(扶桑社)より一部を抜粋。尊敬するマツコ・デラックスさんやナジャ・グランディーバさんとの交流について紹介する。(全2回の2回目/日本移住編を読む

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小原ブラスさん

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「私は実はゲイです」とは言わないようにしている

 よく芸能関係者に「もう少しオネエっぽくしたほうがインパクトがありますよ」「もっとクネクネしてオネエ言葉を使ったほうが売れるかもよ」などというアドバイスをもらうことがある。

 確かにテレビ界では派手な格好をした女性らしい、いわゆるオネエタレントと呼ばれる方々が売れてきたし、僕も大好きだ。でも、その人たちはオネエっぽい見た目や言葉遣いをしているから売れているわけではない。最初こそ奇抜なビジュアルが取っかかりにはなったかもしれないが、その方たちは中身があったからこそ、今も生き残っているのだと思う。

 同性愛者の芸能人や有名人の存在は、日本のLGBTQの歴史においては大きな存在だ。美輪明宏さんやカルーセル麻紀さんなどの世代の芸能人のおかげで、こういう人がいるのだと多くの人に知ってもらえた。これはいわば認知の第一段階だったと思う。

 その次に、おすぎとピーコさんやIKKOさんなどの面白い方たちが出てきて、視聴者の興味・関心を引き付けることに成功した。そして、今ではマツコ・デラックスさんやミッツ・マングローブさんなどの華やかな女装家さんたちが結構まともなことを言う。それによって、「変わった人たちではなく、意外に普通でまともなことを言うのだ」と、多くの人に共感を抱かせた。

 そして、そろそろ次の段階ではないだろうか。その次の段階は、「いろいろな性の人が普通にいるんだ」と自然と世間に受け入れてもらうことだ。必ずしもオネエっぽい見た目や言葉遣いをしている必要はないと思う。厳密にはそうなってほしい。自分の周りの誰が同性愛者でも、誰にどんなアイデンティティがあっても、おかしくはないんだと多くの人が気づけば、さらに生きやすい世の中になるのではないだろうか。

『アウト×デラックス』(フジテレビ系)や『5時に夢中! 』(TOKYO MX)でもそうだが、僕はテレビで「私は実はゲイです」とは、なるべくは言わないようにしている。

「好きなタイプは? 」のようなたわいもない話題の中で、さりげなく男性俳優の名前を挙げるようにしている。アウト×デラックスでは野村周平さんと答えたが今は町田啓太さんだ(笑)。アウト×デラックスで男性俳優の名前を言ったとき、「え? 」と共演者たちは反応したが、いつかそれが普通の会話になればいいと思っている。

 アウトはグッドの裏返し、弱点は簡単に強みに変えられるというコンセプトを持った、前衛的な番組でこのような表現をさせてもらえたことには感謝している。