文春オンライン

2022/10/21

genre : ライフ,

廃墟を保存・活用する難しさ

 マヤカンに期待する一方で、廃墟愛好家としては一抹の寂しさも感じる。厳格に管理され、文化財に登録された現状で、今後、観光資源となった場合に、マヤカンは廃墟と呼べるのか。

 かつて炭鉱の島として栄えた軍艦島(正式名称は端島)は廃墟の島として有名になり、2015年に世界文化遺産として登録された。現在は年間20万人以上が訪れ、長崎県を代表する観光地となった。これを受けて、廃墟愛好家の間では「軍艦島は廃墟ではなくなってしまった」と言う者も少なくない。

観光地化することで建物から醸し出る廃墟感は失われていくのか

 廃墟が産業遺産や文化遺産として認定され、観光地化されたらなおさら、きちんと管理されるようになる。廃墟は自然に倒壊したり、解体されて更地になったり、リフォームされて再び使われるようになったりと、いつかは失われてしまうものだ。それに対して、産業遺産や文化財は、原則として保存される。また、観光客を入れるのなら、安全性を担保する必要がある。そうした対策を講じれば講じるほど、廃墟は綺麗で安全に整備され、廃墟感は失われる。

廃墟的な景観の魅力はどうなるか

 マヤカンが示した廃墟としての価値、廃墟景観は、保存や活用と一見対立するように感じる。今後、どのように両立していくのか、その議論はこれからだ。

 11月3日、神戸市で廃墟景観について話し合うシンポジウムが行われる。実は筆者もこのシンポジウムにパネラーとして参加するため、今回、特別にマヤカンに入れてもらったのだ。

 廃墟景観にも価値があり、保存や活用との兼ね合いにどう折り合いをつけるのか。マヤカンがその議論のきっかけになることは間違いないだろう。マヤカンの未来は、多くの廃墟の未来に繋がっている。

INFORMATION

旧摩耶観光ホテル文化財登録記念 廃墟景観シンポジウム
http://haikyo.heritabi.com/

その他の写真はこちらよりご覧ください。

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