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「棋は対話なり」将棋の女流棋士が、入門者に“指導対局”をオススメする理由

「棋は対話なり」将棋の女流棋士が、入門者に“指導対局”をオススメする理由

2022/10/14
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 ある日の夕暮れ、夫が将棋ソフトで研究をしていると、長女(6)が言った。

「これ誰かと対戦してるの?」

「違うよ、パソコンで将棋を勉強しているの」

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 続いた長女のセリフに我が家に小さな衝撃が走った。

「ふぅん。私も将棋やろっかなぁ」

「パパみたいにパソコンを使ってやりたい」

 以前このコラムでも書いたが、幼稚園年中の春、長女は毎日親と将棋を指していた。

「しょうぎはそつぎょうするの」と言ってから約2年、数える程しか将棋を指さなくなった。そんな長女が将棋をやりたいという。夫はいそいそと研究を終わらせ、長女に言った。

「どうやって将棋をやりたい?」

「パパみたいにパソコンを使ってやりたい」

 しばらくパソコンで駒を動かしていたが、どうにも気分が乗らないらしい。父娘で相談し、入門者の味方「ぴよ将棋(将棋アプリ)」に、長女が盤上で指した手を夫が入力し、返ってきた手を盤に並べるという形に収まった。

 そつぎょう直前では6枚落ち(上手は玉、金、銀、歩だけのハンデ)まで行っていたが、10枚落ち(玉、歩だけ)からスタート。一番下のレベルから倒していって、最近一番上のレベルに勝ったらしい。

年中の頃の長女、帰宅すると将棋倶楽部24を指していた ©上田初美

将棋は同年代の友達ができればもっと楽しくなる

 指さなかった分、棋力的には2年前より落ちているが、小学生になったことによって論理的に考える習慣がついてきたようだ。以前は反射的に自分が指したい手を指していたのが、相手が指した手の狙いを考え、それを防ぐということができるようになっていた。ただ「強さ」だけではなく、将棋以外の人間的な成長や経験も、棋力のプラスになるのかも、と思わされた。

 将棋は同年代の友達ができればもっと楽しくなるということを、私は経験で知っている。

 夫が講師をしている教室に行ってみる?というと、「知らない人と将棋をするのは怖いから行かない」とのこと。

 今は家で「もうダメぴよ~だってー!」とお父さんと笑っているのが楽しいらしい。

 初めての世界に足を踏み入れるというのは、ただでさえ勇気がいる。特に将棋は勝ち負けがハッキリつくので、それが怖い、嫌だと感じるのは長女に限らず、ごく普通の感覚だろう。

 いきなり「1対1の真剣勝負!」の前にワンクッション置きたいという人には、将棋教室などの指導対局が有力な選択肢だと思う。