10月1日付で新たなプロ棋士が2名誕生した。藤本渚新四段(17)と齊藤裕也新四段(25)の2名である。新四段誕生の舞台となった第71回奨励会三段リーグ、最終18・19回戦が行われた9月10日の模様をお伝えする。

三段リーグを突破した藤本渚新四段(左)と齊藤裕也新四段(右)©相崎修司

最終戦前には波乱が…

 17回戦終了時点での三段リーグ成績上位者は以下の通りである。

(4)古田龍生 12勝4敗

(39)齊藤裕也 12勝4敗

(5)藤本渚 11勝5敗

(10)岩村凛太朗 11勝5敗

(17)小山直希 11勝5敗

(2)上野裕寿 10勝6敗

(カッコ内は前期リーグ順位)

 12勝の古田はリーグ順位がよいこともあり、1勝すれば文句なし。同じく12勝の齊藤は今期が初参加ということもあって順位が低く、自力昇段の権利を有しているとはいえ、1敗するとだいぶ可能性が低くなる。そして18回戦で上位2名が相次いで敗れる波乱があった。

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 最終戦を前にして昇段の可能性を残したのは以下の5名である。

(4)古田龍生 12勝5敗

(5)藤本渚 12勝5敗

(17)小山直希 12勝5敗

(39)齊藤裕也 12勝5敗

(2)上野裕寿 11勝6敗

 古田のトップは変わらないが、自身が敗れると下位4名のうち3名が負けないと昇段できないため、ほぼ自力でつかみ取るしかない。そして2番手だった斎藤は4番手に後退し、代わりに藤本が浮上してきた。

強豪でも年齢制限の壁が厚く迫るのが三段リーグ

 またこの19回戦では、昇段とは別のベクトルで自身にとっての大勝負を戦う三段がいた。三田敏弘、齊藤優希、相川浩治の3名である。

 26歳の年齢制限が迫っており、リーグで勝ち越さないと今期での退会が決まってしまう。そして、3名ともこの日の朝を9勝7敗で迎えており、1局目で敗れていた。齊藤優は今期の加古川青流戦で決勝三番勝負に進出しており、また新人王戦でも増田康宏六段を破る殊勲の星を上げ、ベスト4まで勝ち上がっていた。そのような強豪でも年齢制限の壁が厚く迫るのが、三段リーグという戦場である。

 19回戦は藤本、齊藤裕、上野が勝ち、古田と小山は敗れた。この結果、藤本と齊藤裕の四段昇段が決まり、次点は上野が獲得した。奨励会三段リーグでは、対局の勝者がリーグ表に自身の白星と相手の黒星を捺印することになっている。すなわち、奨励会幹事の席に置かれているリーグ表の前に姿を表したら、印を押すまでもなく勝ったということが推測できる。

 関東奨励会の幹事を務める佐藤和俊七段は「古田三段は印を押しにくる様子はなく、他の星取りを気にしている素振りがあった。彼の立場として、自身が勝てば他者の星は気にしないはずなので、負けたんだなと思った」と語った。

 そして、年齢制限が迫る3名のうち齊藤優が勝ち、三田と相川は敗れた。昇段者と次点が報道陣に伝えられて、さらにしばらく間をおいてからの連絡だったため、「そうですか」と何となしとは言え、場の空気が多少重くなったような気がした。