1期で順位戦A級への復帰を決めるなど、各棋戦で好調が続く稲葉陽八段。

 また、準公式戦のABEMAトーナメントでは、チーム稲葉「サンライズワン」をリーダーとして率いて決勝戦に駒を進めている。

 稲葉八段へのインタビュー後編では、一門や後輩棋士たちとの交わり、そして身の回りの変化について聞いてみた。

ADVERTISEMENT

稲葉陽八段

チーム稲葉は「爆発力はあるが安定感はない」?

――早指し棋戦と言えば、最近は団体戦のABEMAトーナメントが注目されています。稲葉さんは服部慎一郎四段と出口若武六段をチームメイトに指名されて、決勝まで進出しました。メンバーを決めるドラフト会議が行われたのは今年の1月だったと聞きますが、その数か月後に服部四段と出口六段が叡王戦の挑戦者決定戦を戦ったこともあり、ドラフト時点でこの二人を指名されたのは稲葉さんの慧眼では、とも言われています。

稲葉 昨年はABEMAトーナメントと同じくフィッシャールールの師弟トーナメントが行われ、私は師匠と参加しましたが、服部君にはその時に練習相手を引き受けてもらいました。師弟トーナメントが終わってからは30秒将棋の「SUNTORY 将棋オールスター 東西対抗戦」があり、朝練と称していた練習対局は続きました。服部君は早指しが強く、色々な形を勉強している印象です。ABEMAトーナメントはすでに経験済みだったので、活躍すると思い指名しました。

――出口六段についてはいかがですか。

稲葉 同門ということでよく知っていましたし、昨年は勝率も高く、また元々早見え早指しタイプなので、フィッシャーのルールに慣れれば強いと思っていました。彼については前回指名できれば慧眼だったのでしょうが(笑)。

1期で順位戦A級への復帰を決め、NHK杯でも優勝を果たした ©相崎修司

――お二人が戦われた叡王戦の挑決はどのように見ていましたか。

稲葉 実は挑決当日にドラフトが放映されたので、タイミングがもう少し早ければツィッターをやりやすかったな、などと考えていました。挑決は出口君が勝ちましたけど、負けたほうが調子を崩すのではという心配もありました。まあ、その1週間後に服部君に負かされたんですけど。

――改めて、今回のチーム稲葉は、どのようなチームでしたか。

稲葉 事前に言っていたことは「爆発力はあるが安定感はない」ですが、予想以上にそうなりました(笑)。チームが勝って勢いに乗ったら強いことは分かっていたのですが、準決勝では初戦に負けて、途中は2勝2敗と波に乗るのが大変なところをチームとして盛りたてていきながら勝ち上がれたのは良かったと思いますし、予選の初戦の時より成長を実感できました。決勝戦もチーム一丸となって頑張りたいです。