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「結婚すると師匠に伝えたら驚いていましたね」ABEMAトーナメントで決勝進出、稲葉陽八段に起きた“身の回りの変化”

「結婚すると師匠に伝えたら驚いていましたね」ABEMAトーナメントで決勝進出、稲葉陽八段に起きた“身の回りの変化”

稲葉陽八段インタビュー #2

2022/09/24
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井上一門の兄弟弟子と師匠

――稲葉さんは井上一門ですが、一門ならではのホーム感などはありますか。

稲葉 そうですね、長らく一門研はやっていましたが、コロナになってからは研究会に参加しなくなったので、最近はどうなのかな。船江さん(恒平六段)や菅井君(竜也八段)とは一緒に食事へ行く機会などもありますし、出口君とは今でも研究会をやっていますが、奨励会員の弟弟子を全員把握している自信がありません。先日、四段昇段を果たした藤本君(渚新四段)とは、数年前には大駒落ちで指していたので、不思議な感覚です。

 

――師匠としての井上九段は、どのような方ですか。

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稲葉 普段はにこやかにされてますけど、怒るときには怒るので、弟子としては怖い存在です。特に遅刻など、時間のルーズさに関しては厳しいです。

――以前に井上九段から、加古川時代の稲葉さんはものすごい早指しだったという話をお聞きしました。

稲葉 子どもの頃はめちゃくちゃ早かったですね。奨励会へ入ってもしばらくは変わらなかったです。奨励会の級位者は基本的に1日3局指しますが、午前中に3局指したのはおそらく私だけでしょう。しかも1勝2敗で、その時の奨励会幹事が師匠です。私が入会した1年後の奨励会試験で、試験官を担当した時の話です。見込みがない会員ですよね(笑)。

 

「稲葉さんは結婚しないでしょうね」と言われていた

――身の回りの変化についてもお聞きします。昨年の1月に結婚されてから、生活リズムなどは変わりましたか。

稲葉 生活リズムは……変わったのかな?(笑) その点に関しては、どちらかというとコロナの影響がより強い気がします。緊急事態宣言の発出で、対面で行っていた研究会をネットにしましたが、自分はどうも苦手で、それで調子が落ちました。

 まあ自分が甘いのですが、ネットで指すのは集中力が続きません。研究会なのに冴えない作りの将棋を指してしまい、これは相手にも申し訳なく思いますね。ネットの利点は東京の棋士など、普段指す機会が少ない人と指せるということがありますが、やはり自分は対面のほうが向いています。今では対面の研究会も復活しました。

――奥様は将棋は指されますか。

稲葉 ルールは覚えたらしいですね。私の対局結果は見ると言っていました。

――稲葉さんの結婚観とは、どのようなものでしたか。

稲葉 30歳になるころに「そろそろ結婚したいな」という気持ちはありました。でもそれほど強かったわけでもなく、無理なら仕方がない、くらいのスタンスでしたね。