最近の新四段は皆強いので、どれだけ通用するか

 まずは井上九段から。

「リーグ最終日はドキドキしますね。仕事先でスマホを見ては(結果ページの)更新の繰り返しでした。そのうち着信があり、そこに出た名前を見て『やった』と思いました。香川県出身の藤本が、初めて加古川の道場に来たのは小学1年か2年の時だったかと。まだまだ小さく、かわいらしい子どもでしたが、アマ三~四段は指していたのに驚きました。

井上慶太九段。稲葉陽八段や菅井竜也八段ら一門には多くの棋士・女流棋士がいる ©文藝春秋

 正式に入門が決まるときは、小林先生(健二九段、香川出身)にも確認を取りましたね。『どうぞ、面倒を見てやってください』と言われた記憶があります。初段になるまでは香川から例会に通っていましたが、当日の朝早く起きて関西将棋会館に行っていたので、大変だったと思います。

ADVERTISEMENT

 ただその分、根性はついたんじゃないかな。最近の新四段は皆強いので、どれだけ通用するかということに興味がありますが、17歳と若いこともあり、もっと強くなると思います。藤井さん(聡太竜王)にはまだまだ及ばないでしょうが、将来は多く戦ってほしいですね」

藤井と対戦できるところまで勝ち上がってほしい

 杉本八段にとっては、棋士デビューを果たした弟子は藤井竜王に続き2人目となる。

「やはり弟子の昇段がかかった最終日は落ち着きませんね。藤井の時は外出先で結果を常に気にしていました。頻繁に将棋会館へ電話を繰り返して、1局目の負けを聞いてがっかりした記憶があります。

2人目の弟子が誕生した杉本昌隆八段(写真左) ©文藝春秋

 今回は電話よりもホームページを確認する方が速いと教えてもらい、そちらを見ていたのですが、齊藤が1局目に負けて厳しいと思いました。この日は白玲戦の仕事で指宿に行っており、その感想戦に立ち会っている最中に職員の方から別室に呼ばれて、昇段を教えてもらいました。

 齊藤が入門したのは、当時の東海研修会で私が幹事だったのがきっかけの一つです。15歳6級で決して早くはないので、『スランプは許されない』と言った記憶がありますね。また杉本門下には『18歳で初段、20歳で三段』という掟があるのですが、彼はどちらもクリアしていない。でもその時に『やめさせたりはしない』と伝えました。

 齊藤自身は、21歳の頃に二段から初段へ降段した時が一番きつかったと思います。年齢のこともあって、今回逃したらチャンスはなかなか来ないだろうとも思っていましたが、棋士として25歳というのは決して遅くありません。新たな気持ちで上を目指して、藤井と対戦できるところまで勝ち上がってほしいですね」

この記事を応援したい方は上の駒をクリック 。