しかし、当初から専門家の間では、ヨード入りうがい薬を使いすぎると喉を傷めて逆に感染症にかかりやすくなるとの指摘が相次いでいた。さらに吉村知事が「『うがい薬使用群』と『普通のうがい群』で比べた研究」で効果が確認されたと説明していたものが、実は「『うがい薬使用群』と『うがいをしなかった群』を比較した研究」だったことも後に判明している。水でうがいすれば十分だった。
次亜塩素酸水の粒子を吸い込んで健康被害は起きないのか
《次亜塩素酸水》
今や当たり前の光景になったのは、入室時のアルコール消毒だ。パンデミックの当初は需要に対してアルコールの生産が追いつかず、代用品が求められたこともあった。代表格は「次亜塩素酸水」。
次亜塩素酸水が細菌やウイルスを失活させるのは事実だが、問題は、手指の消毒用ではなく、次亜塩素酸水を噴霧して空気中のウイルスを失活させるという触れ込みの噴霧器が注目を浴びたことだ。オフィスや店舗でこれ見よがしに設置された噴霧器の姿を覚えている人も多いだろう。
だが、そもそも次亜塩素酸水の粒子で空気中のウイルスを分解できるのか、それほど効果のあるものを人が吸い込んで健康被害は起きないのか、当初からSNS上などでこの2点が疑問視されてきた。
記者会見でコロナ対策には効果がないことを認める
そこで2020年6月11日に、販売業者らが組織する次亜塩素酸水溶液普及促進会議は、反論の記者会見を開く。効果と安全性のアピールの場になるはずだったその記者会見は、予想しない方向へ進む。次亜塩素酸水のポジティブな効果を説明するために招いていた三重大学の福崎智司教授が、「人がいる空間では、このような非常に薄い気体状次亜塩素酸では効かない」と、コロナ対策には効果がないことを認めてしまったのだ。
効果がないのに毒性が不明な気体を吸い込むリスクを冒す理由はない。さらにコロナ対策として過大な効果を謳う広告文を問題視した消費者庁が、2021年3月に販売事業者3社に対し景品表示法違反の措置命令を出す。以降、次亜塩素酸水ブームは一気に下火になった。