3度目のコロナ禍の秋を迎え、人類はようやくこのウイルスとの付き合い方を理解しつつある。多くの人にワクチンが行き渡り、コロナ感染症で重症化 する患者が少なくなるにつれ、かつての日常が戻り始めた。

日本が感染者数や死亡者数を低く抑えられた理由

 振り返ればパンデミック当初、世界はパニックに陥った。中国の細菌兵器かもしれない、空気感染するらしい、感染者は数十億人に、いや、死者が何億人規模に達するかもしれない――科学的な予想もオカルトな陰謀論もないまぜになった言説が、人の口の端にのぼり、SNSやメディアを彩った。

 日本も例外ではなかった。鎖国体制を敷き、出社や登校が制限され、人前ではマスクをつけるのが常識になった。「3密」「クラスター感染」「PCR」という耳慣れない言葉があっという間におなじみになった。

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 よその国が日に日に右肩上がりの感染者数を計上するのを尻目に、日本の感染者数や死亡者数は比較的低く抑えられてきた。その理由は徹底した感染対策のおかげとされた。やがてそれは“信仰”となり、今では厚労省が「屋外ではマスクをはずしましょう」と広報しても、誰もマスクをはずさないほど信仰は強固になっている。

 本当に“優れた感染対策”のおかげで、被害が少なかったのか。振り返れば、おかしな感染対策はいくつかあった。あらためて検証すべき時がきている。

うがいは水ですれば十分

《ヨードうがい薬》

「うそのような本当の話をする」

 大阪府の吉村洋文知事は、2020年8月4日の会見でそう前置きした。テーブルにうがい薬(イソジン等)をずらりと並べ、「これらでうがいすることで、コロナの患者さんが減っていく」とカメラの向こうの視聴者に訴えたのである。

ポピドンヨードうがい薬の効能を力説する吉村大阪府知事 ©時事通信社

 昔から馴染みのあるうがい薬がコロナに効く――生中継で大々的に報じたテレビ局もあった吉村知事のこの発言はインパクト大だった。その日の夕方、ドラッグストアではヨード入りうがい薬が飛ぶように売れ、在庫はあれよあれよという間に払底した。