マンガを乱読「フェティッシュだけは鮮明」
日渡 マンガとなりますと膨大すぎて……手塚治虫先生はおそらく私の基盤でしょう。たとえば『どろろ』『火の鳥』『ブラック・ジャック』など。
水野英子先生は『星のたてごと』『ハニー・ハニーのすてきな冒険』、大島弓子先生大好き大好き、萩尾望都先生、竹宮惠子先生、あべりつこ先生の『すえっ子台風』好きだったなぁ……。永井豪先生も読んだなぁ。
他にもちょっとすぐ出てこないですが、あらゆる作品が私を形成しました。あ! 横山光輝先生の『バビル2世』は宝物ですね。そして忘れちゃいけない、車田正美先生の『聖闘士星矢』!!
――出版社やジャンルがまるでバラバラですね。
日渡 ね? まとまりないでしょ? コレが本屋の娘ですよ。そして大体中身を忘れていくのです。好きだというフェチ、フェティシズム、フェティッシュだけを記憶して。そこは鮮明なのです。
……私だけか。全国の本屋の娘さんに対して失礼ですよね。
『ぼく地球』後、ヒットを飛ばせない……
――『ぼく地球』以降の作品では、「新しいテーマを描きたいのに、読者からは『第2のぼく地球』的なものを求められる」という悩みはありませんでしたか?
日渡 ないです。私の作品の読者さまはいつもなぜか、感謝しかおっしゃいませんでした。読者さまがいなければ、ここまで描くことも叶いませんでした。神様かと思っています。
――神様。
日渡 神様なんですよ、きっと。星みたいに空でキラキラしているので、私が砂浜で稚拙な絵を描いて、見上げて手を伸ばして話しかける。そんな関係かと思われます。
――読者は空に輝く星のようなもの……?
日渡 ヒットを飛ばせないという悩みに囚われた時期もありましたが、それは己が勝手に己を縛っていただけなので。
自分は自分でいいと開き直ったら、ただ読者さまの星が空で輝いているだけだと気付かされました。