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1.被告人の着衣や現場の遺留物に宮本被告が犯人である痕跡が残されていること

 事件当日(6月11日)、被告人が着ていたスーツの右ポケットの内側と、履いていた左右のビジネスシューズに被害者の血液が付着していた。さらに、殺害時、稲田さんの腕を縛るために使った粘着テープの芯から被告人の指紋が検出された。なお、この粘着テープは、被告人が犯行のおよそ2週間前となる5月26日に勤務する会社近くの店で同じものを購入したことが分かっている。そして、犯行現場には宮本被告の指輪が残されており、その結婚指輪には稲田さんの皮膚片も付着していた。死亡鑑定を担当した医師は、指輪をはめた手拳などで顔面を殴打した可能性を指摘している。

「ごまちゃん」から帰る時に稲田さんと一緒に写真を撮るのを宮本被告は楽しみにしていたという 友人提供

2.事件当日、宮本被告がビル内で不審な行動をし、被告人以外に犯行を行え得る不審人物がいなかったこと

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 21時9分頃に、会計を済ませた被告は稲田さんや女性従業員と一緒に写真を撮ったあと、エレベータで1階に降りたものの、ビル内に留まっていた。21時29分頃に女性従業員が帰宅し、22時8分以降は稲田さんの携帯電話がLINEのメッセージなどを受信しない状態になった。のちに携帯電話は、アルミホイルで包まれて電波が遮断された状態で発見された。従業員が退店した21時29分から22時8分までに殺害されたと考えられる。その間に通常の入り口以外からビル内に宮本被告以外が侵入することは難しかった。

宮本被告が潜んでいたとみられるビルの階段

3.被告人には犯行の動機が考えられること

 宮本被告は連日「ごまちゃん」を訪れたり、毎日LINEを送信したり、稲田さんの接客態度が意に沿わない時には被害者に対して多数回に渡って電話をしていた。こういう被告に対し、稲田さんは距離を置いていた。被告は稲田さんに好意を抱き、強い執着心を持っていたと認められ、その好意が受け入れられず、稲田さんに対する思いを鬱積させた挙げ句、犯行に及んだと考えられる。

4.罪証隠蔽工作

 被告は稲田さんを殺害後、事前に検索して調べていた防犯カメラを取り外してSDカードを抜き去り、稲田さんの携帯電話をアルミホイルで包み、店外に保管してあったカギケースを店内に移動させるという罪証隠蔽工作に及んでいる。

 そして量刑を判断する上では、犯行そのものが執拗かつ残忍で、極めて悪質という点に注目してこう述べた。