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壇蜜が私生活“そのまま”を書くとこうなる

著者は語る 『噂は噂 壇蜜日記4』(壇蜜 著)

『噂は噂 壇蜜日記4』(壇蜜 著)

「書いた物を本の形にできる機会が多いことは有り難いです。でも同じくらい、大きな責任を感じますね」

 タレント業のかたわら文筆の才を開花させ、書き続けて早数年。壇蜜さんの日記帳、第4弾が上梓された。

「テレビのように前に出るお仕事と書き物のお仕事の割合は2対1くらいになりました。いつも思っていることがあるんです。この状態はいつまで維持できるんだろう、って」

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 凡百のタレント本といえば、個性を強烈に主張し、ギラついたものと相場が決まっているが、壇蜜さんの文章には、肩肘張った前のめりのにおいがない。日常は淡々と過ぎ、ややもすればある種の倦怠感が漂う。

「それは当たっている気がします。いちばん難しいことって、何かを劇的に変えることよりも、今のままの姿勢を維持して、マンネリを続けていくことなんじゃないのかと考えるようになりました。日記なんて、まさにその意味で継続の難しさの象徴かもしれませんね」

 日記の体裁はシンプルそのもの。日付、天気を書きつけ、日常を記していくだけ。

「随筆やエッセイとは違うんだと思って書いています。心がけているのは、あったことを書くということです。〇〇についてどう思った、何を感じたか、は極力書かない。やっぱり日記は日記で、スタイルブックとは違いますから」

 飼っている生物、仕事、通い詰めるサウナ、男のこと――。私生活の暴露、という下卑た感じがしないのは上品な筆致の賜物だ。

だんみつ/本名・齋藤支靜加。1980年秋田県生まれ。昭和女子大学卒業。調理師免許を取得しつつ冠婚葬祭の専門学校にも通う。工場、ホステス等の職業を経て芸能界デビュー。2013年、映画「甘い鞭」で日本アカデミー賞新人俳優賞。著書に『たべたいの』など。

「自分で読み返して思うのは、毎日眠そうにしている女だなあってこと(笑)。皆さんの中にある私のイメージ通りではないと思うんです。孤独な独身女を想像されている方もあるかも知れませんが、全然孤独じゃない。純潔とか潔癖なんて演出をしていないし、人様からお叱りを受けても一向に直そうとしない。ウソをつかないように気をつけているので、自分の中の気持ちが昇華されることもありません。裁縫で言う運針みたいな日記ですよね」

 毎日決まった字数で記されるが、7日に1度、短い分量の日記がある。

「それは日曜日ですね。私、日曜があまり好きじゃなくて。カレンダーによって週の始まりが日曜か月曜か違うことがあるでしょう? 『このどっちつかずめ』って意地悪したくなって」

 三日坊主になりがちな新年の日記。ありのままを心がけ、ほんのちょっとの悪意があれば、かくも長続きすることを教えてくれる。

『噂は噂 壇蜜日記4』

2016年7月から2017年10月までの1年と少しの期間、休まず毎日つけ続けた日記帳をまとめた文庫オリジナル企画の第4弾。仕事の風景、日常のあれこれ、飼い猫、飼い魚を愛おしむ姿、結婚に思いを馳せたり、好いた男のことを思い出したり――壇蜜さんの知られざる(?)私生活を垣間見るような「日記文学」の秀作。

噂は噂 壇蜜日記4 (文春文庫)

壇 蜜(著)

文藝春秋
2018年1月4日 発売

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