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「男尊女卑は日本古来の伝統ではありません」ワンオペ育児を正当化して女性の負担を増やした日本人男性の“罪深すぎる誤解”

『女性の覚悟』より #3

2022/11/03
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男尊女卑は日本古来の伝統という誤解

 私は歴史が好きですが歴史上の人物として活躍するのはほとんど男性、historyはhis story だったのですが、その内実は、世界各地域で少しずつ違います。

 日本では女性たちの影響力が他の父権的社会より強かったのです。太陽神が女性で最高神というのも欧米や中国の文化では見られず、日本は父系社会でもなければ母系社会でもない。父母双系の社会で、父は地位や職業、母親は家族の生産活動や結婚や後継者決定に大きな影響を持ち、家や土地は母親から娘に相続されました。

 中国からもたらされた儒教の男尊女卑の考え方が武士の社会では一般的になった後も、町人や農民の間では女性たちは相続権や財産権を持ち、狂言でも落語でもおかみさんは強く、家業を支えていました。それを知る中で、私の考え方は変化してきました。

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 しかし多くの日本人は、男尊女卑は日本古来の伝統と誤解しています。皇室典範の男系の男子という考え方も戸籍制度も夫婦同姓も明治以降の制度です。古来の伝統ではありません。

今でも日本に色濃く残る「性別役割分担」

 強固に見えた性別役割分担の慣習も40年たつと少しは変わってきています。1978年から学習指導要領が改められ、男性も家庭科を履修するようになった影響という人もいます。若い男性が少し子育てや家事(主に料理)に携わるようになりました。私の世代では保育所の送り迎えは女性、母親の仕事でした。祖父母は手伝ってくれましたが、父親は長時間労働だったということもあり、全く手伝わず、たまにお迎えに父親が来ると珍しがられ、ほめそやされました。

 しかし今では昭和女子大学附属こども園では朝の送りは父親が半分近く、夕方のお迎えにも父親がかなり参加しています。若い共働きの家庭では父親が保育、子育てを分担するのが当たり前になってきたようです。

 それでもまだ日本の父親・夫たちは他の先進国と比べて性別役割分担が色濃く残っています。スウェーデン、アメリカなどでも女性のほうが男性より育児に割く時間は長いのですが、その差は日本ほど大きくはありません。6歳未満の子供を持つカップルで父親の家事・育児参加は、他の国ではおおよそ3対2というところが日本では5対1にすぎません。

 だからワンオペ(ワンオペレーションの略)育児といわれるように母親1人が育児を背負い込んでいるのです。それを正当化しているのが男性の長時間労働や職場外の「付き合い」でした。それは日本の経済成長率をさせている慣習でしたが、働き方改革やコロナ対応の在宅勤務の広がりで変わり始めようとしています。