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女性の負担感を高める微妙な習慣

 育児以外の家事も女性の負担となっています。まとまった時間やエネルギーがいるわけではありませんが、こまごまとした家事――ゴミの分別、布団やベッドの後片づけ、宅急便の受け取り、市役所への届出、書類処理、洗濯物取り込みや仕分けなどなど、誰かがやらなければならないのでつい女性が抱え込んでしまう「名もなき家事」の数々。

 男性にはそうした家事は女性の仕事、お金を稼いでいる自分は家庭では「ご主人様」、「お客様」の気分で、サービスされるのが当然と考える意識がまだ残っています。そうした気くばりや世話ができる女性が「女子力」があるとして評価されています。こうした微妙な習慣が女性の負担感を高め、新しい分野へのチャレンジを妨げてきました。

 男性は仕事だけをしていればよい、家庭は女性の責任という役割分担は20世紀の後半の専業主婦が多い時期にはそれなりに機能したでしょうが、共働き家庭が多数を占める現在ではもう維持できません。少子化はその結果です。

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©️iStock.com

人生の責任者になるという覚悟が足りなかった日本の女性

 女性の社会進出が進んで、女性が経済的責任を分担しているにもかかわらず、家事も育児も介護も妻が主で夫は手伝いだけ。お互いの責任として分担するのが当たり前にはなってはいません。これが女性の晩婚化、非婚化を生み、少子化の大きな原因になっています。女性にとって職場で男性と同じように働き、そのうえ、家事育児を抱え込むのは、重いリュックを背負って男性と100メートル競走をしろと言われるようなものです。

 ヨーロッパでもアメリカでも女性が職業につき、経済的負担を分担し始めたときに女性たちは男性に家事を分担するように要求しました。しかし日本ではその要求が十分でなかったことが、企業や社会の古い体制を温存しました。なぜ他の国の男性は変わったのに日本の男性は変わらなかったのでしょうか。

 男性が職場の長時間労働で疲れ果てて全く余力がなかった(ゴルフや付き合いの時間はあるようです)からだけでしょうか。日本の女性が有能で、男性がすべき仕事をみんな抱え込んだからでしょうか。いろんな理由はありますが、私は女性自身がアンコンシャスバイアスにとらわれて「仕方がない」とあきらめていたことが大きな原因と思います。女性たちが自分の力に自信がなく人生の責任者になるという覚悟がなかったので、働きかけが弱かったことは確かです。(#4に続く)