6月に出るモンスターハンターの新作を楽しみにしていた
小6の頃、不登校になった翔さんは市教委に「転校させてほしい」と自分で言ったという。
「あの子は行動力がありました。学校に見切りをつけていたんです。急に思いついて、市教委に転校の手続きをしに行きたいと言っていました。私は仕事で休めなかったんですが、『ええわ。俺1人で行ってくるわ』と言い、市教委に行っています」
中学入学後は、小学校のときに不登校だったことで、「少年院帰り」などと言われ、7月ごろから学校へ行けなくなった。夏休み明け、担任に相談するが、「誰が言ったか特定できないと指導できない」と言われた。9月中旬からの2週間は毎日通学していたが、ある日を境に、学校へ行かなくなった。小学校時代のいじめについて、翔さんが「すべての生徒に聞いてほしい」と言ったが、それを渋ったために、担任に対して拒絶的になったからだ。
「亡くなる前の1月ごろからは、『俺、引きこもってないよ。ちゃんと外出ているよ。引きこもって、体が鈍ったらあかんからちゃんと散歩にも行っているもん』と言っていました。家ではスマホをいじったりしていました。ゲームをずっとしていましたね。モンスターハンターが好きでしたね。亡くなる前日も、6月に新作が出るというので、誕生日は12月だけど、6月に新作が出たらプレゼントとして買ってほしいと言っていました。グラフィックが綺麗なので、楽しみにしていました。まさか……」
検証報告書を市長が受取拒否して大きな問題に
翔さんや兄に対する学校の対応について、母親は市教委に個人情報開示請求をした。該当する箇所は140ページ分あったが、ほぼすべてが「黒塗り」だった。
「ページによっては行数もわからない“のり弁”と言われる真っ黒のものです。これだといくらでも書き換えられるじゃないですか。なんの書類かわからない状態も問題だと指摘したら、どんな書類かの項目を作ってきました。誰が作った書類かもわからないのです。不登校だったので勉強会の計画書ってあるんですが、作るまでの議事録や検討事項はないんです」
市長部局にある「条例委員会」は、個別問題の調査権はないものの、母親から聞き取りをして検証を行った。その結果、22年5月、市教委に対して、基本調査や、市教委や学校の対処、その対処に対する評価や課題の認識についての報告を要請した。
6月には、市教委に対し、文部科学省の「子どもの自殺が起きたときの緊急対応の手引き」、「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針(改訂版)」、いじめ防止対策推進法による必要かつ適切な対処をすべき、などとした意見表明を行った。その後、会議に参加要請していた教育長が欠席したことで、条例委員会の声に耳を傾けるよう、再度、意見表明した。