2022年3月18日、大阪府泉南市内の中学校に通っていた当時1年生、松波翔さん(享年13)が自宅近くで自殺した。小学校時代からいじめを受け、学校や市教委に相談していたが、十分な対応がされなかったという。
筆者の取材に応じた母親(48)は「学校組織に対する不信感が要因ではないか」と推測する。半年以上が経った9月29日、ようやく学校は保護者や生徒に、翔さんが自殺で亡くなったことを伝えた。これを受け、母親は翔さんの実名と顔写真を公表した。
「あの子は、ほがらかで、なんでも笑いに変えるような子でした。小学校低学年でいじめにあい、教師との関係もよくなく、不登校になりました。卒業証書は、中学生になってから渡されました。中学でも、同じ小学校出身の同級生からのいじめがあり、学校へ行けなくなっていました」(母親、以下同じ)
兄に「誰も知らない遠くへ行く」と告げ、帰宅せずに自殺
中学1年生の10月、翔さんは大阪弁護士会のLINE相談窓口に学校に関する相談のメッセージを送っていた。亡くなる半年前のことだ。亡くなった当日はどうしていたのか。
「前日は長男(翔さんの兄)の高校受験の合格発表でした。だから、長男もゆっくり寝ていて。兄弟2人で夜遅くまで遊んでいたのは知っていました。いつもは私が起こしに行くんですが、この日は、2人とも休みだからいいかなと思い、あえて起さずに仕事に行ったんです」
母親によれば、翔さんは小学校時代から子ども同士や教員との関係を通じて、学校への不適応感が強くなり、不登校が続いた。中学校に入学後も状況は好転せずに、「生きていてもしょうがない」と漏らすようになった。22年3月18日、母親が仕事に出かけた後、兄に「誰も知らない遠くへ行く」と告げ、帰宅せずに自殺したという。
目の手術がきっかけで友達が近寄らないように
「当日、帰宅すると、長男から、あの子が10時ごろに外出し、昼食も食べていないことを知らされました。17時20分ごろ、焦って警察に電話しました。外出してからスーパーでバナナジュースを買った記録が残っていたといいますが、それから死亡推定時刻の18時までの足取りはわかっていません。翌日になって遺体で発見されました」
学校でのいじめについて、母親に話すようになったのは小3の頃だった。
「亡くなった後に聞いた話ですが、あの子は目の手術をし、眼帯をしました。そのため、みんなが気味悪がって、せっかくできた友達が近寄らないようになったことがあったと。そのとき、『目の手術なんかせえへんかったらよかった』と言っていたようです。
ただ、私には、目のことは言っていませんでした。本人にとっては、打ち明けるほどのことではなかったのではないでしょうか。小3のときも、自分からは言いませんでした。擦り傷を作ってきたとき、『自分で転んだ』と言っていました。しかし、話を聞くと、『帰るのに歩いていたら、後ろから突き倒された』と。担任にも相談しましたが、誰にされたのかは言いませんでした」