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 しかし、家を出たとたん、仕事が増え出した。女性週刊誌でコラムの連載を始め、『5時に夢中!』に出演するようになったのもこのころだ。先述の木村拓哉と再会したTBS系の『ピンポン!』には2006年の番組開始時より出演し、その名は一躍全国に広まった。

「テレビに出るべき人って、バケモノであるべき」

 ブレイクしてからというもの、テレビについて意見を求められることも多かった。そのなかでは繰り返し「テレビは本来、異形の人というか、特殊な存在の人間が出るべきもの」と語っている。マツコ自身、レギュラー出演する深夜バラエティ『アウト×デラックス』で数多くの規格外の人々を紹介してきた。

 残念ながら『アウト×デラックス』は今年3月、開始から丸9年で終了した。マツコの同番組への思い入れは深く、放送終了直後には《アタシは一人のテレビ関係者として、彼らみたいな人こそテレビに出るべきだと思う。いまのテレビはいろんなものが削がれて、平坦で中庸な人しか出られなくなっている。そんな中で、本来テレビに出るべき人って、アタシがその代表格だけど、バケモノであるべきだと思っているから》、《だって、隣にいる人と大差ない人を、わざわざテレビで見たくないじゃない。(中略)そういう意味で『アウト×デラックス』っていうのは、この時代の中ではギリギリ、そういう人々の欲望に応えられるべく、やっていた》と滔々と語っている(『週刊文春』2022年3月24日号)。

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(左から)マツコ・デラックス、深田恭子 ©時事通信社

 テレビには昔からさまざまな制約が存在したが、マツコはけっして妥協はせず、番組内で別の出演者の発言に対し司会者が「不適切な発言」とお詫びしたときには「何で簡単に謝るのよ、バカヤロー!」と批判したこともあった(『AERA』2009年8月31日号)。

昔から「変人」に憧れていた

 そんなふうに怖いものなしのキャラクターで売り出したマツコだが、ある対談では、自分はものすごく弱い人間だといつも感じており、それを隠したいがために虚勢を張って傍若無人であるかのように無意識にふるまっているところもあると、自己分析していた(『CREA』2012年8月号)。そんなふうに自分を客観的に分析できることに対談相手の小島慶子が感心すると、マツコは《たぶん、昔から変人に憧れてたからじゃないかな》と言って、次のように語っている。

《自分が痛いくらいモラリストだっていう自覚があって。憧れているものと自分があまりにもかけ離れているから、ちょっとでも彼らに近づきたいと思っていた。強く意識しているわけではないけど、きっと今の人格が形成された裏には、憧れの存在と自分との隔たりを少しでも埋めなきゃって思っていた思春期の無駄な努力がある。それが今のアタシを作ったんだと思うのよ》