筆者は「週刊文春 電子版」(10月24日配信)で、国立国際医療研究センター病院が“医療事故死”の可能性が非常に高いにもかかわらず、遺族が求める第三者調査を拒否し続けていた問題について報じた。感染症対策を筆頭に、日本最先端の治療を担っている同病院。詳細は「電子版」に譲るが、遺族のAさんや関係資料などによれば、主な事実関係は以下の通りだ。

 2021年2月、Aさんの兄(70代前半)が同病院で受けた低侵襲心臓手術後に亡くなった。4時間の予定だった手術は11時間続くなど不可解な点が多々あったという。以降、遺族は1年半以上、医療事故調査制度に基づく調査を求めてきた。14年の法改正で、医療事故が疑われる事案が発生した場合、病院側が日本医療安全調査機構に報告し、調査を行うことが義務付けられている。だが、病院側は「その必要はない」として調査を拒み続けてきた。

厚労省所管の国立国際医療研究センター ©時事通信社

 そんな中、一石を投じたのが日本心臓血管外科学会名誉会長の髙本眞一・東大名誉教授が寄稿した論文である。髙本氏は日本を代表する心臓血管外科医として知られる人物だ。

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 今年9月15日発行の日本心臓血管外科学会雑誌に掲載された〈患者中心の医療を病院でいかに行うか─医療事故の判断〉。匿名だが、論文で取り上げられたのはAさんの兄の事例だ。