1ページ目から読む
2/4ページ目

 さらに、

「私は自虐ではなく“かませ犬で終わらないぞ”と気合をこめて、今回の追悼の原稿をしっかり書いていこうという意味」

「プロレスファンじゃないとわからないメッセージ」

ADVERTISEMENT

 と述べたという。ズバリではないか。多くのプロレスファンはニヤリとしたはずです。

野田演説には、プロレス的要素がいっぱい

 実際に演説自体にもプロレス的な要素がふんだんにありました。

 私はプロレスは「相手の良さを引き出しながら、いかに自分の主張を出していくか。観客の想像を踏み越え、仕掛け、いかに心を掴むか」というジャンルであるとも思っています。

 野田氏の演説もまさにそうでした。安倍氏を讃えながらも「そういえば野田さんも元首相だったな、いろいろ闘っていたんだな」と“観客”に想像させ、自分を上げることにも成功していた。巧いなぁと思わずニヤっとしました。安倍晋三のライバルは野田佳彦だった、というイメージすら植え付けることに成功したのかもしれません。したたかです(褒め言葉)。

安倍晋三 ©文藝春秋

 こんな言葉もありました。安倍元首相との「論戦」についてです。

《少しでも隙を見せれば、容赦なく切りつけられる。張り詰めた緊張感。激しくぶつかり合う言葉と言葉。それは、1対1の「果たし合い」の場でした。激論を交わした場面の数々が、ただ懐かしく思い起こされます。》

 正直この部分は「あの2人のやりとりってそんなに凄い論戦だったっけ?」と思ってしまいました。しかしこれも自分の存在を観客に訴えるマイクアピール(主張)だと思いなおせば理解できた。自分を美しく見せて少々盛るのもマイクアピールです。