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添乗員の怒り「クラブツーリズムは無理な行程も…」

 A子さんは事故について「絶対に起きてはならない」と厳しく批判しつつも、「野口くんにも責任はありますが問題はそう単純ではない」とも続けるのだ。

「まず、あのコースを設定したクラブツーリズムに過失があると思います。クラツーのコースは、JTBなどと比べると低価格な割に、いろんな立ち寄り場所があって“お得”なんです。一方で無理な行程があるのも事実。ネット上にも書かれている通り、あのコースを通る行程表にもかなり無理があったように思います。

 ベテランのドライバーさんだったら多少遅れても『いつものことだ』と慌てませんが、今回初めてあのコースを担当した若手の野口くんにとっては到着予定時間に次の目的地に間に合わないことにかなりの焦りを感じていたんじゃないかな……。プレッシャーから、運転操作がおろそかになってしまったのかも知れない」(同前)

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急カーブの連続からか、いたるところにブレーキ痕がある 撮影/宮崎慎之輔 ©文藝春秋

通常の車両とは違う“特殊車両”

 さらに事故を起こしたバスはクラブツーリズム専用の“特殊車両”だったという。事故車両に乗務経験のある別の添乗員B子さんが解説する。

「通常の観光バスは11列か12列で40席以上あります。しかし事故のあったバスはクラブツーリズム専用で9列36席。乗用車と同じ3点式のシートベルトで、電動リクライニング付きです。後部には化粧台付きの立派なトイレもありました。

 運転をするにしても、通常の車両とは重心や重量感が違うようでした。美杉観光は飯能車庫に入れていた事故車のほかにもう1台、板橋車庫にも同様の特別車を持っています。板橋車庫のバスも数年前にブレーキトラブルがあったと添乗員の間で情報共有されています」

事故現場のカーブ。下り坂から一瞬上り坂に差し掛かる。 撮影/宮崎慎之輔 ©文藝春秋

 この特殊車両は、クラブツーリズムから仕事を受注するための大きな売りだったという。外装もクラブツーリズム仕様になっていた。

「お客さんの乗り心地がいいですからね。クラブツーリズムから年間の契約が取れれば、会社には継続的な収入になります。秋はバスツアーのかき入れ時ですが、どうしても夏や冬は減ってしまうので、大手と年契約を結ぶのは観光バス会社にとって大きな収入源になるんです」(同前)