10月13日、富士山五合目からの下り坂で、日帰りバスツアーの観光バスが横転し、乗客1人が死亡した。
この事故は運転手による単純な運転ミスによるものなのか、それとも事故の背景に何かほかの原因があるのか――。
バスを運行していた「美杉観光バス」を取材するため、本社のある埼玉県飯能市を訪れると、目の前を埼玉県内の私立中高名が書かれた同社のバスが猛スピードで通過した。バスに乗客はいなかったが、白髪頭の運転手が窓をフルオープンにし紙巻きたばこを吸っていた。
飯能市民はこう嘆息する。
「死亡事故を起こしたばかりだというのに、周囲に見られていることも分からないんですかね。このあたりでは美杉さんのところの運転は荒いと有名ですよ」
経営幹部と社員の“残酷すぎる格差”
近年、同社は吉田典弘社長ら経営幹部陣の手腕で急拡大してきた。バス台数を増やし、京都や沖縄にも営業所を設置。
一方で運転手の待遇がよいとはいえず、複数の元社員らが過酷な長時間勤務や杜撰な新任研修制度について証言している(《観光バス横転》美杉観光バス元社員らが続々証言する“過酷すぎる労働環境”と“穴だらけの研修制度”「13連勤が月2回。睡眠時間が4、5時間のことも…」)。
「それでも待遇がよかったらまだ我慢できるけどね……。有給休暇はないし、残業代は固定で交通費やボーナスはもちろん、退職金もなし。この業界はブラックな職場ばかりですが、中でも美杉は特にひどかった。
あと自分たちが許せないのは、幹部たちの豪奢な生活です。私たちが置かれている状況と全然違う。幹部と社員の“格差”が酷いんです」(50代の元美杉観光バス運転手Cさん)
同社の登記簿によると、吉田社長の住居は、飯能市から東京都目黒区の高級賃貸マンション、現在は渋谷区の瀟洒な一戸建てへと“ステップアップ”している。