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通行は無料だが危険すぎる「ふじあざみライン」

 美杉観光の元社員もこう明かす。

「事故のあった『ふじあざみライン』は無料で通行できますが、その分急勾配でカーブもあって重量のある観光バスで走行するのは危険なんです。断っている大手バス会社もあると聞いたことがあります。同じ富士山五合目へいく道でも、有料の富士スバルラインとは全く異なります。いくら定期収入になるからといって、こんな危ないルートをタイトな行程で受けるなんて、会社として正しい判断とは思えません。

ふじあざみルート:事故現場のカーブ。下り坂から一瞬上り坂に差し掛かる 撮影/宮崎慎之輔 ©文藝春秋
富士スバルライン:比較的急なカーブ。道幅は広く走りやすい 撮影/宮崎慎之輔 ©文藝春秋

 美杉観光では仕事の受注やドライバーの配置は清水照康副社長が決めていました。現職社員に聞いた話ですと、野口容疑者は清水副社長に『稼ぎが悪いから辞める』と直訴していたそうですが、清水副社長は『稼げるから』とクラブツーリズムの乗務を勧めて慰留したこともあったそうです」

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乗務時間改ざんの可能性「絶対にやばいですよね」

 前出のA子さんは取材にこうも明かした。

「バス運転手が疲弊したまま乗務をしないように、乗務と乗務の間には決まった時間を空けるよう法で定められています。ですので、バス運転手が乗務している時間は『デジタルタコメーター』で記録するんです。

 ですが、野口くんはツアーが終了して乗客を降ろすとタコメーターを外していました。本来は車庫に戻るまでつけておかないといけないものなのですが……。ですが、美杉観光に乗務を詰め込まれていたので、時間をごまかさないと次の乗務に間に合わなかったようです。会社からも外すよう指示をされていたようです。野口くんは『これって絶対にやばいですよね』と言っていました」

 静岡県警が事故原因について捜査を進める一方、国交省は美杉観光バスを特別監査している。運行や運転手の勤務実態などについても調査を進めている。

あざみライン:花束が添えられていた 撮影/宮崎慎之輔 ©文藝春秋

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