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「チクったに違いない」逆恨みから暴行を企み…

 ある日、Aは酔っぱらった勢いで遼太に暴力をふるい、顔にあざをつくってしまう。後日、不良グループの先輩がそのことを知り、Aに対して「遼太を殴っただろ」と因縁をつけてきた。不良グループにしてみれば、弱いAたちはいいカモだった。

 Aは不良グループにお金をとられたり、家に押しかけられたりしたことで、きっと遼太がチクったに違いない、と逆恨みをはじめる。勘違いであることに気がつかず、一方的に復讐しようと考えた。

 2月の寒い夜、AはBやCとお酒を飲んだ後、酔った勢いで暴行するために遼太を呼び出す。そして人目につかない真っ暗な多摩川の河川敷へ連れていった。

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 河川敷に到着した時、Aはリンチをしようくらいにしか考えていなかったが、思いがけないことが起こる。Cがこれでやれよと言わんばかりにカッターを差し出してきたのだ。Aは見下されたくないと思ったのか、つまらないメンツのために何度かカッターで切りつけた。

 遼太の体から血が流れて服が赤く染まった。Aはそれを見て、だんだんと殺すしかないと考えはじめた。中途半端にケガを負わせて帰らせたら、また不良グループから暴力をふるわれるし、少年院に入らなければならなくなる。それを避けるには、いっそのこと遼太を殺してしまうしかない。

 Aは何度もカッターで切りつけたものの、弱い性格ゆえにひと思いに殺すことができない。BやCにもカッターを押しつけてやらせても、みんな同じように勇気がなく、傷つけることはできても、命を奪うまでにはいたらない。

 結局、A、B、Cは合計43回も遼太の体をカッターで切って重傷を負わせた末に、河川敷から立ち去った。置き去りにされた遼太は、立つこともできず、そのまま出血多量によって死亡した。

殺害後の驚きの行動…なぜそんなことができたのか

 信じがたいのは、A、B、Cのその後の行動だ。彼らは遼太を殺害した後、Cのマンションの部屋にもどり、朝までゲームに夢中になった。3人にとって、遼太の命はゲームで忘れることができるくらい軽いものでしかなかったのかもしれない。

 この事件を一冊の本にまとめるため、僕はAのグループのメンバーにたくさん話を聞いたけど、その中で強く感じたのが彼らの人間関係の薄っぺらさだった。

 グループに加わっていた子供たちの大半が、親が離婚をしていたり、貧困家庭にあったり、虐待を受けたりしていた。家庭は安心できる救いの場じゃなかった。そんな子供たちが、孤独をまぎらわすためにゲームセンターに集まり、グループを形成する。

 印象的だったのがグループの一人がはっきりこう言っていたことだ。